健康診断も受けられないほど警戒心が強かった元野良猫…少しずつ心を開いてくれて、なでられるように

東京都表参道。華やかなビルが立ち並ぶ表通りから1本奥に入った通りのテナントビルに母猫と4匹の子猫が住み着いた。ビルに入っていた美容室の美容師が保護団体に相談、猫たちを捕獲して里親を募集した。神奈川県に住む樋口さんは2匹の里親になったが、半年以上野良暮らしをしていたのでとても警戒心が強かった。

■表参道のビルに住み着いた親子猫

東京都、表参道にあるビルに野良猫が住み着いた。母猫が1匹と子猫が4匹いた。ビルの中は雨風をしのげるので、子育てをするにはちょうどいい場所だった。そのビルには美容院が入っていたので、猫好きの美容師がえさを与えていた。1匹の子猫は交通事故に遭って亡くなったそうだ。

子猫たちが生後半年くらいになった時、美容師たちは、なんとか猫を保護しようと保護団体に相談。2016年10月16日に2匹の子猫を保護した。1匹なかなか捕まえられず、一週間後に捕獲。母猫も捕獲して不妊手術を受けさせたかったが、逃げてしまったという。子猫たちの不妊手術代は保護団体が出してくれた。

保護団体のボランティアは、「2週間以内に里親を探さなければいけない」と言った。2週間以上人と暮らすと、再び野に放つことはできないそうだ。美容師たちは、美容室や周囲の店に里親募集のチラシを貼り、Facebookにも掲載した。

■1匹のつもりが2匹飼うことに

神奈川県に住む樋口さんは、結婚して戸建ての家で暮らすようになり、猫を迎えようと思っていた。子供の頃から猫が好きだったが、両親が家の中でペットを飼うのを反対。ずっと一緒に暮らすのが夢だったという。

表参道の美容院に以前通っていた友人が、「美容院で保護猫の里親を募集している」と教えてくれた。

10月31日、樋口さんは美容室の休憩室にいる猫を見に行った。捕獲してから2週間が経とうとしていたので、その場で里親になるのかならないのか決めなければならなかった。3匹のうち1匹は里親が決まり、2匹残っていた。

夫婦ともに室内で猫を飼うのは初めてだったので、最初は1匹だけにするつもりだった。

「どちらの猫でもいいのなら、先に保護して去勢した猫をもらってほしいと言われ、その子に決めました。ところが、帰ろうとした時、もう1匹の猫がニャアと鳴いて私にぴたっとくっついたんです。まるで離れたくないと言っているかのようでした。2匹を引き離せないと思い、夫に相談して2匹飼うことにしました」

2匹とも野良猫の子なので警戒心が強く、石のように固まっていた。

■パニックで健康診断できず

11月4日、樋口さんは2匹を車で迎えに行き、その足で動物病院に連れて行った。健康診断とワクチン接種をしたかったが、2匹とも恐怖と緊張で瞳孔が完全に開いていて、獣医師は、健康診断はできないと言った。キャリーバッグから出さずになんとかワクチン接種だけした。

「獣医師には、『この子たちは人の膝の上に乗せたり、抱っこしたりするのは難しいと思う。あきらめたほうがいい』と言われました。半年間野良猫として暮らしていたので、その覚悟はしていました。抱っこできなくてもいいので、猫の気持ちを尊重したい。向こうから来たら抱っこしたらいいと思っていました」

名前は蘭丸くんと茶々丸くんにした。

2匹とも夕方になると低い声でうなるように鳴いていた。数週間後、茶々丸くんはちょっとした隙間からベランダに出てしまい、半日ほど帰ってこなかった。

「屋根に上っていたと思うのですが、蘭丸が不安そうにしていました。茶々丸は家に帰ってきたのですが、暗いところに隠れてしばらく出てきませんでした」

■野良猫から家庭猫に

樋口さんは、ペットの問題行動の治療を専門にしている獣医師のカウンセリングを受けた。

「猫にとって快適なベッドやケージの配置や猫との関わり方を教えてもらいました。無理矢理動物病院に連れて行くとストレスになるので、なるべく病院には連れて行かないようにしています。でも、災害時や病気の時に困らないよう、キャリーバッグに入れて移動できるよう練習はしています」

蘭丸くんはなでたりブラッシングしたりできるようになった。蘭丸くんは、ぐっすり寝ている時なら、なでられる。

樋口さんは、安心した表情でリラックスして過ごしている2匹を見ると、兄弟一緒に迎えてよかったと思うという。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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