長距離トラックの荷台に迷い込んで10時間、蒸し暑さに耐えた子猫が、ジェントルマンで優しい猫に

長距離トラックの荷台の扉を開けると、そこには1匹の子猫がいた。誰か子猫を飼える人はいないのか。誰もいなければ保健所行きもやむを得ないと騒ぎになった。里親希望者がいたが、土曜日まで引き取れないという。大阪府に住む稲田さんは、その日まで子猫を預かることにした。

■長距離トラックの荷台を開けると子猫が!

2011年9月6日の火曜日、神奈川県厚木市から大阪まで荷物を運んだ長距離トラックのドライバーは、大阪で荷台を開けた時、中に子猫がいるのを発見して驚いた。「なんでこんなところに子猫が!」。動物を荷物として送る人もいるので、誰かの荷物から出てしまったのかもしれない。ドライバーは一生懸命「猫」と書いてある伝票がないか探した。しかし、伝票はなく、厚木で荷台に野良猫の子猫が迷い込んだようだった。

 厚木から大阪まで約10時間、荷台は蒸し暑く、大きな荷物に潰される危険もあったが、子猫は無事だった。箱に入れられた子猫は、暴れてかみついた。

■しばし子猫を預かることに

大阪府に住む稲田さんの夫は仕事で荷置き場にいたのだが、誰か子猫を引き取ってくれる人はいないかと騒ぎになっていた。

稲田さんは16歳のシニア猫、鈴音(りん)ちゃんを飼っていたので簡単には引き取れなかった。心臓や腎臓の薬を飲んでいるので、子猫と暮らすのは負担になると思った。

「でも、飼い主が見つからなければ保健所に連れて行くのもやむを得ないという話も出ていて、夫から『どうしよう』と電話がかかってきたんです」

誰かが週末まで面倒を見てくれるなら引き取ってもいいという人がいた。平日だけなら大丈夫だと思った稲田さんは、火曜日から土曜日まで子猫を預かることにした。

■まさか我が子に!

家に着くと、子猫はおとなしくしていた。動物病院に連れていき、キャットフードを与えた。生後2、3カ月で元気だった。

子猫を預かっている間、稲田さんは熱心に写真を撮っていた。その姿を見た夫は、「週末、子猫を渡したら悲しむだろうな」と内心心配したという。

土曜日、子猫を引き取ると言っていた人が「そのまま飼ってくれないか」と連絡してきた。

「先方もシニア猫を抱えていたので、なんとなく土壇場でひっくり返るかもしれないと思っていました。やっぱりなと。迷うことなくそのまま飼いました」

名前は、梨音(りおん)くんにした。

稲田さんは多頭飼いをしたことがなかったので不安だったが、鈴音ちゃんは穏やかな性格で、子猫をすぐに受け入れた。

2週間後、トラックのドライバーが稲田さんの夫に「あの時の猫、どうなりました?」と聞いてきた。厚木から大阪まで運んできたので、ずっと心配していたようだった。

稲田さんは、いま4匹の猫を飼っているが、なかでも梨音くんはおっとりした性格。ごはんを食べている時に他の子が寄ってくると「どうぞ」と譲るジェントルマンだ。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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