コロナ離婚 構造は熟年離婚と酷似…「もう息が詰まる!」は法的に認められるのか 平松まゆき弁護士に聞く

 新型コロナウイルスのために外出自粛や在宅勤務などが続き、自宅で過ごす時間が一気に増えてしまったという夫婦は決して珍しくない。一緒にいる時間の増加に伴い、ケンカもまた増えてしまうのが世の常だ。「コロナ離婚」という言葉もネット上で散見できる。かつて歌手デビューも果たした元アイドルの平松まゆき弁護士にコロナ離婚についてQ&A方式で解説してもらった。

Q コロナ離婚という言葉を聞くようになりました。コロナ離婚とはどんなものでしょうか?実際に相談はありますか?

A テレワークなどで夫婦共に家にいる時間が多くなりました。在宅で仕事をするという慣れない作業や子守りとの両立の難しさ、自粛生活のストレスも相まっていさかいが増え、夫婦仲が悪くなったので離婚したいという事案ですね。この種の離婚相談は増えつつあるのが現状です。

Q そんなことが離婚理由になるのですか?

A コロナ離婚の構造は熟年離婚に似ていると思います。これまでは夫婦のどちらか、主に夫が多いですが、日中は外で働いているので顔を合わせるのはせいぜい朝晩。ところが定年後、朝から晩まで夫は家にいて家事を手伝うわけでもなく、かえって自分のやることに文句をつけてくる。もう息が詰まって一緒に暮らせない!という熟年離婚のご相談はとても多いんです。古いですが「亭主元気で留守がいい。」というCMもありましたよね?コロナ離婚も同じで、四六時中一緒にいて夫(妻)の行動のひとつひとつが気に障るようになったという方が増えていると聞きます。

Q 「一緒にいると息が詰まるから離婚したい」ということが法律上の離婚理由になるのでしょうか。

A 民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると言えるかどうかの問題です。ここでいう、婚姻を継続し難い重大な事由とは、たとえばDVや強度のモラルハラスメントといった極端な場合が多く、単に一緒にいたくないというだけでは該当しません。ましてコロナがきっかけで、となるとますます婚姻を継続し難いかどうかの結論を出すには時期尚早と言えそうです。少なくとも家庭内別居が数年来続いているというような夫婦関係の破たんという状況が必要です。

Q ということは逆にコロナ禍のストレスでDVを受けたり、強度のモラハラを受ければ離婚理由になると。

A そうですね。自粛疲れや経済不安によるストレスが女性や子どもに向かうという海外の報告もありますよね。肉体的・精神的暴力にまで及んでしまった場合には、時期を待たずに早々に専門家に相談されることをお勧めします。そして仮に調停や裁判離婚になった場合に備え、DV等を立証する資料が必要です。「これだけひどい暴力を受けた」「こんなひどい言葉を浴びせられた」と訴えるだけでは足りません。そのため暴力の跡を写真におさめる、病院で診断書をもらう、警察に届け出る、といったことを怠らないでください。さらに身の危険を感じる場合にはいわゆる母子避難シェルターでかくまってもらうこともできます。お住まいの地域の配偶者暴力支援センター等の力を借りてください。

◆平松 まゆき 弁護士。大分県別府市出身。12歳のころ「東ハトオールレーズンプリンセスコンテスト」でグランプリを獲得し芸能界入り。17歳の時に「たかが恋よされど恋ね」で歌手デビュー。「世界ふしぎ発見!」のエンディング曲に。20歳で立教大学に入学。芸能活動をやめる。卒業後は一般企業に就職。2010年に名古屋大学法科大学院入学。15年司法試験合格。17年大分市で平松法律事務所開設。ハンセン病元患者家族国家賠償訴訟の原告弁護団の1人。

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