コロナ禍で始めた「鍋ラーメン」…遠隔地でも購入可! 秘策は冷凍スープ、元ボクサー店主に反響を聞いた

 コロナ禍に伴う休業要請で苦境に立たされる飲食店。神戸市内でラーメン店を営む元プロボクサーで現役プロ格闘家の坪井将誉(まさたか)さん(47)は、持ち帰りの「鍋ラーメン」を始めて半月が過ぎた。現在では、近所の人だけでなく、他県から鍋持参で訪れる人もいて、手ごたえを感じているという。当サイトでは4月にその試みを報じたが、引き続き、その後の反響を店主に聞いた。

 坪井さんがJR兵庫駅から徒歩8分の街中に「気合いのラーメン つぼ」をオープンしたのが2007年。13年にはテレビ番組で調理したカレーラーメンが評判になって客足が伸び、多い日で1日100人以上が来店したというが、コロナ禍で3月下旬から来店客が激減。家賃や人件費も厳しくなり、4月23日に自身のツイッター(@tsubo1234)などSNSで鍋ラーメンの販売開始を告知した。

 テイクアウト用の容器を使わず、鍋にしたのには2つの理由がある。坪井さんは「家族のいる方は皆で食べて会話が増えるようにと思って鍋にしました。実際、鍋料理のように、小さいお椀に取り分けて食べていただいています。もう一つは、電子レンジで温めるより、鍋を直接火にかけた方がおいしいと思うから」と説明。来店客が自宅から鍋を持参するスタイルは、結果的に、不燃物ゴミを出さないという意味で環境にも優しい取り組みとなっている。

 ただ、麺類のテイクアウトの場合、課題は「麺が伸びること」にある。前回の記事に対して「近所の人しか買えない」という指摘もあった。「スープの冷めない距離」ならぬ「麺が伸びない距離」の近隣住民でなければ難しいのか…と思いきや、遠隔地でもOK。そこには工夫があった。

 奈良県のトラック運転手の男性は、2日前に電話で注文。坪井さんが人数分のスープを冷凍しておき、男性はその凍ったスープを入れる鍋、ネギやチャーシュー、もやし等の具を入れるタッパーウェアを持参。店側が用意したビニール袋に入れた生麺との「塩ラーメン5人前」セットと、生餃子を店主の焼き方アドバイスを受けて持ち帰った。

 この男性は以前から神戸に立ち寄った際に来店しており、「まるっきり店と一緒というわけにはいかんけど、ほぼ同じくらいうまかった。餃子の焼き方はまだまだやけど、嫁はお気に入りや」と坪井さんにメールで報告したという。

 神戸市内でも徒歩20分くらいの場所に住む常連客は鍋にスープと具を入れ、生麺を袋入りで別に持ち帰る。坪井さんは「麺を茹でる時間は、火力の強い店内では30秒弱なので、家庭のガスであれば40秒くらい。スープを温めながら、横で同時に麺を茹でていただければ」と伝えている。

 20代のシングルマザーが幼い子どもの分も含めて味噌ラーメンを鍋で2人前購入した時のエピソードも忘れられない。坪井さんは「税込700円2人分で1400円のところ、女性は1500円を出されたので、おつりの100円をお渡ししようとしたら『それでジュースでも買ってください』と。店の前にある自販機が100円なので、そう言ってくださった」と若い女性の人情に感謝した。

 坪井さんは鍋ラーメン効果について「子どもさんと自宅で一緒に食べられる、家族が仲良くなったという声も。1人で来られていた常連の男性は醤油ラーメンを鍋で2人前持ち帰って奥さんと一緒に食べたことで『夫婦の会話が増えた』と言っておられました」と振り返る。

 ただ、爆発的に売れているわけではない。「鍋ラーメンの注文が一番多かったのは4月29日で、3人の方が計8人分を注文されました。その日以外では、1人分だけという日もあります」。それでも、鍋ラーメンは続けていく方針だ。「たとえ1日1杯の700円でも、定休日の火曜をのぞく月26日で26杯。半年で156杯。それでもええやないかと。お客さんが1人でも満足いただけるように、できることをやっていこうと考えています」。坪井さんは気合を込めた。

(まいどなニュース/デイリースポーツ・北村 泰介)

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