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オートクチュールを支える立体裁断 高齢者、障害者向けの洋服などで広がる需要

 「むかしの神戸は優雅さがありましたね。パーティなども盛んで」

 そう語るのは元・園田学園女子大学教授の梶間充子さん(75)だ。

 港街・神戸はかつて、欧州航路の拠点として栄えてきた。そのためヨーロッパ的な雰囲気が、街のさまざまなところに色濃くにおっていた。

 「でも、最近はそういう神戸らしさが薄れてきたように感じます。服に関しても、そうでしょうね」

 梶間さんは40年近くにわたって被服関係の講座をもち、理論と実技を教えてきた。そのかたわら、22年間にわたってパリのサンディカ校(オートクチュール組合学校)にかよい、立体裁断(ドレーピング)の技能を学んだ。教えを乞うたのはディオールやサンローラン、シャネルなどのオートクチュール・メゾンで活躍し、その後同校で教鞭をとるようになったニコラ・レズバ女史だ。

 立体裁断とは、ボディ(人台)に布をあてて、立体的にパターン(型紙)をつくることをいう。高級注文服であるオートクチュールでのみ使用される技術で、平面裁断によるプレタポルテ(高級既製服)とは一線を画す。基本的にはフランス国内でしか、その技術を習得することはできない。

 「たとえ立体裁断の技術をもった職人さんがいたとしても、それを教えるにはまた別の能力が必要です」

 梶間さんは教員時代から自身のアトリエ(伊丹市)を構えるなどして、おもにファッション業界や教育現場の「プロ」を対象に立体裁断の講習をつづけている。日本では数少ない存在だ。

 しかし、社会全体にかつてほどの経済的なゆとりがなくなり、オートクチュ?ルの服を着る機会がへった。いまではウェディング需要が中心になっている。文化の継承という意味では寂しいかぎりだ。いっぽうで、新たな取り組みもある。

 高齢者向けのファッションが、そのひとつ。立体裁断はからだの変化や動作にあわせた服づくりが可能なため、新しい需要の掘り起こしになっている。最近では、からだにハンディキャップをもった人たちの洋服にも、この技術がつかわれるようになってきた。

 「立体裁断は、人のからだを知ることが重要。その意味では、美的な要素と工学的な要素をあわせもったもので、身体工学的な技術でともいえるでしょう」

 立体裁断のメリットは、平面では見つけにくいラインを見つけられることにある。とくに襞(ひだ)のあるデザインや微妙な丸みをだす服づくりで、その力を発揮する。こうした立体裁断の特性が、伸縮性のあるストレッチ素材の服にもうまくマッチした。より動きやすく、かつ優雅な服づくりができる。

 これまでに梶間さんがもっとも心ひかれたのは、1970年代半ばに大阪のロイヤルホテルで見たマダム・グレのショーだった。「布の彫刻家」と呼ばれた巨匠の、古典的かつ洗練された作品に、まだ30代前半だった梶間さんは心打たれた。

 そこころにはまだ、神戸の街にもヨーロッパの薫りが強くあったのだろう。

 梶間充子さんの立体裁断作品は、原田の森ギャラリー(神戸市灘区)で9月19日(木)から23日(祝)まで開催される「第44回こうべ芸文美術展」で観ることができる。

(サンテレビ特約・大西昭彦)

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