２０１８年７月、朝から太陽がギラギラと照りつけ、うだるような暑さの日。大阪の住宅地で、ある人物が、庭でニャアニャア泣いている子猫をダンボール箱に入れ、路上に捨てているところを近所の人が目撃した。

　午前８時頃、目撃者の人が見に行くと、ダンボール箱の中には１匹の子猫が入れられていて、ニャアニャア鳴いていたという。お腹がすいていたのか、暑かったのか、必死に助けを求めているようだった。誰にも気づかれず、そのまま気温が上昇していたら、小さな子猫の命は危なかっただろう。

保護主さんは、猫の保護団体・ワンハート大阪に猫の引き取り料を支払って子猫を託した。子猫は、「ハミ」と名付けられた。

■「どう？って…その子がいいんやろ」

　京都府内で暮らす芝さんは「うちの子供は３人兄弟なんですが、２人がケンカしていると１人が仲裁するんです。３人っていいなと、ずっと思っていました。だから、猫も３匹いたらいいなって。キジ白の姫と茶トラの小判をワンハート大阪から譲り受けていたので、３匹目もほしかったんです」。

　芝さんがワンハート大阪のブログを見ていると、ハミくんが載っていた。ひと目見て「可愛い」と思った奥様は、すぐにご主人に連絡して「どう思う？」と相談したという。子供の頃から保護猫と暮らしてきた、大の猫好きのご主人は「どう？って…その子がいいんやろ」と言うしかなかった。

　同年８月、ハミくんは芝さんのところにやってきた。家に着くと、先住の姫ちゃん、小判くんは、サッとロフトに隠れてしまった。ハミくんは、猫の匂いはするけど、姿が見えないため、ちょっと緊張気味に室内を探検し始めたという。名前は、ハミくん改め、佐助くんになった。

■お腹の中に虫が…でも返すつもりはなかった

　じつは、ハミくんは、芝さん宅に到着する直前、車内で下痢をしてしまった。後で動物病院に連れて行くと、お腹の中に虫がいたことが分かったという。ワンハート大阪は、「返してもらってもいい」と言ったのだが、芝さんは、返すつもりはなかったという。

　「お腹が治るまでは、姫や小判と隔離する必要があって、でも、部屋のドアを締めると寂しくて鳴いてしまうので、すぐに網戸をドアの代わりに設置したんです。すると、みんなの姿が見えるので安心したようです」

　人間の子供と同じく、佐助（元ハミくん）くんと小判くんがケンカすると、姫ちゃんが仲裁に入る。すごく仲良しというわけではないが、ほどよい距離を保ちながら暮らしているそうだ。