「第2の患者」がん患者の家族をサポートする会、大阪から活動発信

 「がん家族の保健室」では1時間の完全予約制で患者家族の相談を受けている。電話による相談も可能
 プロボランティアによるハンドマッサージは、予約不要で気軽に立ち寄れる
 「がん患者さんの看病をしている人のサポート協会」代表であり、がん家族セラピストの酒井たえこさん
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 家族の誰かががんと診断されたとき、患者さんに寄り添う家族もまた、大きなストレスにさらされる。ときには心と体のバランスを崩してしまうことも。そんな「第2の患者」ともいわれるがん患者の家族を専門にサポートするのが「がん患者さんの看病をしている人のサポート協会」。がん家族セラピストとして活動する酒井たえこさんが代表を務める、大阪発のボランティア団体だ。

 発足は2014年。がんを患った父を看病したことが、活動を始めるきっかけだった。酒井さんはつらさや不安をひとりで抱え込んでしまい、父を亡くしたあとは、うつ状態で布団から出られなかった。そんなときふと頭をよぎったのが、病院でのある出来事だったと言う。

 「父の容体が悪化し、食欲もなく寝ることさえできなくなっていたある日、隣の患者さんに付き添っていたおばさんが、おにぎりをくれたんです。昨日から何も食べてないでしょって。せっかくもらったので食べると、その日は少し眠ることができました」。

 暗闇にいるような看病中、欲しかったのは「ひとりじゃない」という安心感だったと気付いた酒井さんは、自分にできることを探しはじめたという。

 協会の主な活動は「傾聴」と「マッサージ」によるサポート。月1回開催する「がん家族の保健室」では、一対一で話を聞く場と、ハンドマッサージが受けられる場の2つを用意している。サポートにあたるのは看病の知識やマッサージの技術を持つボランティアスタッフたち。がん患者家族が抱えるさまざまなニーズに応えるためだという。

 「深く悩みを聞いてほしい人もいれば、リラックスや気分転換したい人もいます。患者さんの症状が変化するように、家族の心も日々変化するんです」。

 だが、活動について理解されない時期もあった。支援金を募った際には「家族が看病するのは当たり前なのに、サポートするためのお金を集めるのはおかしい」と非難された。それでも続けてこられたのはサポートを必要とする人がいたからだと酒井さん。

 「遠くに住む人から、どうしてそばにいてくれないんですか、と言われたことがあります。その言葉が忘れられなくて。なんとかして会える距離にいない人にも寄り添いたいと思い、「がん患者の家族を救う55のQ&A」という本を出版しました」。

 病院のがんコーナーで酒井さんの本を見つけた人から、わざわざ連絡をもらうケースもあるという。

 話を聞くうえで大切にしているのは、「答えを出すのはあくまで相談者自身」という姿勢。「相談者の多くは、怒りや悲しみなどの感情がごちゃまぜになって、問題が複雑になっています。お金の問題や、トラブルが重なってしまうことも。それらを一つ一つ整理して、解決方法を提示するのが私たちの仕事だと思っています」。

 酒井さんが目指すのは、がん患者さんとともに闘う家族が、当たり前にサポートされる社会だ。「孤独を感じている人に、ひとりじゃないよと伝えたい。そのために講演活動もしています。呼んでいただければ全国どこへでもとんで行きますよ」

(まいどなニュース特約・森田朝子)

◆「がん患者さんの看病をしている人のサポート協会」HP

https://gankanbyou.jimdo.com/

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