母が物忘れ「同じものを買う」「現金引き出し」…どうすれば?

 この春から、進学や就職、転勤などで一人暮らしを始めた方もいらっしゃるでしょう。様々な事情で、家を出て一人暮らしになった人も、家に残って一人暮らしになった人も、大きな環境の変化になったことと思います。身体と心のケアはできているでしょうか?そして、生活に必須の「家計」への配慮もできているでしょうか?

 今回の事例は、夫に先立たれたAさんの事例です。Aさんは、一人になってからは年金でマイペースに暮らしています。もともと倹約するタイプですが、最近は同じような商品が溜まってきています。息子が帰省するたびにもったいないと伝えても変化はみられません。ある日、Aさんと一緒に銀行へ行った息子が、Aさんがまとまったお金をおろすのを見て心配になりました。そして思ったより早いペースでお金が減っていることに気が付きました。Aさんは、快活な様子ですが、そういえば最近少し物忘れをしている様子もありました。

 家計の管理は、収入を考え、必要なものの金額、使える金額、買わなければならないもの、節約できるところなど、記憶して計算すること、見通しを立てること、それらを適切に行うための判断力など、さまざまな能力が必要です。Aさんは、生活のさまざまなことはご自身でできていますが、記憶力や判断力が低下している部分で、金銭管理に影響が出てきていると考えられます。

 さて、息子は離れて暮らしているため頻繁にAさんの面倒を見に戻ることはむずかしい状況です。Aさんのケアマネージャーに相談してみると、「社会福祉協議会がやっている、日常生活自立支援事業のなかで、お金の管理を手伝ってくれる福祉サービス利用援助事業があるので相談しては?」と言われ、社会福祉協議会に相談してみました。

 社会福祉協議会(略して、社協)は、全国の各市町にある地域の福祉活動を行っている組織です。福祉サービス利用援助事業では、在宅で生活する人で金銭管理に不安がある方の金銭や、福祉サービスの利用ができるように手伝ってくれます。金銭管理は、本人に契約能力があり、本人がこのサービスを利用することを承諾し、契約書を交わし利用開始となります。条件によっては有料になる部分もあるので、事前に必ず確認しましょう。契約までには社協の専門員と数度の面談があります。利用が開始されると、日常のお金の入った通帳を預け、あらかじめ決めたタイミングで、担当の生活支援員がお金を持ってきてくれます。また、電気やガス代などの支払いや、役所へ提出する書類等の記入などのサポートをしてくれます。

 このサービスは記憶力の低下や、計算や見通しをつけることに困難があり、金銭管理ができにくい方には便利です。例えば月の前半と後半に分けて定額を持ってきてくれるため、「年金が入金されたあと、一気に使ってなくなってしまった」という状況を回避できる手段です。

 Aさんの場合、息子はこのサービスの利用に最初から乗り気でしたが、当のAさんは「自分のお金は自分で管理できる」の一点張りで、利用には拒否を示されました。考えてみると、自分の通帳を人に渡すということには大きな不安が起こるのは当然です。息子と介護の支援者らは協力し、時間をかけて説明をし、Aさんも納得して契約することができました。

 もし、Aさんの理解力の低下が進んでいれば、このサービスは「契約能力があること」が条件なので、使えない可能性がありましたが、Aさんは現時点では分かり易く説明すると理解をされました。今後、物忘れが進行し、判断力や理解力が低下した場合には、成年後見制度の利用が必要になるかもしれません。しかし、現時点では少し金銭管理のお手伝いをしてもらえると在宅生活を安心して継続できる状態でした。このサービスは、認知症の人、知的障害者・精神障害者で日常の金銭管理が難しい方にとって、生活を安心して続けるため役立ちます。お金の管理は、暮らしの中では大切な家事のひとつです。この春から独り暮らしになった方もそろそろ生活に慣れる頃ですが、金銭管理は一人では難しそうだなと感じたら、お住まいの地域の役所や地域包括支援センター、社会福祉協議会へ相談してみましょう。

(森のすず社会福祉士事務所 社会福祉士・森保純子)

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