若者と都市生活者の車離れ…対策探る用具店 オートバックスは「本とコーヒー」で新展開

本や雑誌が並ぶ「A PIT AUTOBACS SHINONOME」の店内=東京・東雲
「A PIT AUTOBACS SHINONOME」の2階入口=東京・東雲
カー用品店の中にある子供たちのスペース。「お話し会」が毎日行われる=東京・東雲
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 「若者の車離れ」が指摘されて久しい。カー用品の販売にも付加価値が求められている中、「オートバックスセブン」(1947年創業、本社・東京都江東区)の取り組みが注目されている。「本とカフェ」のある店舗としてリニューアルした「A PIT AUTOBACS SHINONOME」でクルマ社会の行方を探った。

 「若者の車離れ」は都市部の現象だ。公共の交通機関で日常生活に支障はなく、逆に駐車場代などの負担は大きい。同社の執行役員・山添龍太郎氏は「“若者の車離れ”というよりも、車が非常に高額化して欲しくても買えない。維持費もかかる。以前は子供が生まれたとか、子供が巣立ったとか、ライフスタイルに合わせて車を乗り換えたが、今はコスト的にも厳しい」と指摘。都市生活者の車離れは、若者に限ったことではないようだ。

 かつて男性にとってステータスだった車の所有だが、スマートフォンに依存する人が多くなっている現在、プライベートな時間をドライブかスマホ操作にあてるかという選択を迫ると、若年層の動きはスマホに流れるのではないか。“歩きスマホ”が日常化しても、さすがに“運転スマホ”はご法度である。

 山添氏は「若者の優先順位はスマホから入ってくる。そういう意味で車の優先順位が下がっているのは事実です」としつつ、「行きたいところに車で行く方法は都内でも普通にあり、ライフスタイルに合った車との付き合い方を使い分けている」と分析。それは「カーシェアリング」だ。

 同氏は「今の若い人たちには必要な時だけお金を払って車を借りて乗るという文化がある。週末、東京を走っていると、『わ』ナンバー(※カーシェアやレンタカーで使われるナンバープレート)の車が増えている。所有しなくても、車には乗る。そこをチャンスと捉えたい」という。

 さっそく3階建ての「A PIT(ア・ピット)」へ。1階は整備場、3階はクルマにこだわりを持つ層に向けた売り場で、2階の中央部には本とコーヒーのスペースがある。CCCグループのプロデュースによる「スターバックスコーヒー」を併設した書店「TSUTAYA BOOKSTORE 東雲」だ。周辺には「自然とクルマ」「旅とクルマ」といったライフスタイルにそって8テーマに分けた商品が並ぶ。

 本は洋書を含む専門書から、料理、健康、美容など女性向きの書籍も多く、ベストセラーの単行本、文庫、新書も。購入しなくてもカフェで読める。訪れた平日午後は若い女性が多かった。また、子供が遊べる空間「キッズ・スペース」には絵本や図鑑が並び、毎日午後3時から「読みきかせの会」が行われる。東雲はタワーマンションが立ち並ぶエリアで家族連れも多い。

 山添氏は「店づくりの根本はコミュニティ作り。必要な要素は『本とコーヒー』という一つのパックです。そこで『車っていいよね』という消費活動が起これば」と期待する。さらに「ウェブで車が買える時代が来る。(米国の電気自動車)テスラはすべてネットで買える。お客様が店側との接点を持たずに車を買うことが起こりうるわけで、リアル店舗でのコミュニティ作りが必要」と説いた。

 2030年は化石燃料の転換期となるため、自動車業界に世界的な動きがあると予想されている。新時代へ、顧客確保への下地は着々と進められている。(デイリースポーツ・北村泰介)

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