世界遺産「神宿る島」が人気をキープしている理由

 国内21番目の世界遺産として2017年7月に登録された「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群(福岡県宗像市、福津市)が人気をキープしている。登録時の多大な経済効果が見込める一方、その後の反動が懸念される世界遺産ブランド。廃れないカギは“オール宗像”による取り組みにあるようだ。

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 世界遺産に登録されれば、国内外から観光客が集まり、大きな経済効果が見込める。実際に「神宿る島」宗像・沖ノ島にも特需があった。登録直後の訪問者は前年の1万0589人から3万0131人へと3倍に。地元で観光客のガイドをする「宗像歴史観光ボランティアの会」の船村浩由会長(72)も「ガイドの件数も前年の405件から1195件へ。こちらも3倍増。沖ノ島は“海の正倉院”と言われてます。金の指輪はお見逃しなく」と話した。

 ただ、怖かったのは、その反動だ。昨今では登録から1年ほどで急激に下火になっているケースもなくはない。そんな中で「神宿る島」宗像・沖ノ島は思った以上に善戦している。

 その要因のひとつが18年4月に直売所として九州最大の売り上げを誇ることで知られる「道の駅むなかた」の横にオープンした「宗像観光おみやげ館」だ。場所は世界遺産に登録されている宗像大社から車で7分ほど。地元の特産品や土産物が並ぶ中、人気を集めている銘菓が、その名も「宗像の女(ひと)」。有名な「博多の女」の二鶴堂がつくる姉妹品。観光協会の担当者は「宗像のあまおうイチゴを使ったものや大島の甘夏みかんを使ったものが大人気」と話してくれた。

 期せずして、同年4月には、このエリアを代表するホテルのひとつ「玄海ロイヤルホテル」が24年の歴史に終止符を打ち「Royal Hotel 宗像」として生まれ変わった。これは世界遺産にあやかってのものではなく、27カ所の施設の名称やロゴを変えるという、ダイワロイヤル側のイメージ戦略の一環。「地域性を重視して“宗像”に変更しましたが、世界遺産の登録とタイミングがうまく合致しました」とのことだ。

 昨年10月には「第37回豊かな海づくり大会」に訪れた天皇皇后両陛下がこのホテルで休憩と食事をされた。そんな名門ホテルの自慢は、このエリアでは珍しい温泉と良港の鐘崎港で取れた海の幸だ。

 なかでも内田達也料理長(40)が腕をふるった「宗像三女神会席」はお勧めの逸品。ヤリイカのコリッとした食感と、その甘さに「九州に来たな」と実感。さざえの玉子とじ、地島産の「椿油」で仕上げた海鮮釜飯のつやと香りと滑らかさも絶品だった。

 ホテル側によると「大島までは漁港からフェリーで25分ほど。“光の道”で有名な宮地嶽神社もここから近いですよ」とのこと。まさに“オール宗像”。なるほど、人気をキープしている理由が分かった気がした。(デイリースポーツ特約記者・山本智行)

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