「さくら耳」猫の秘密 実はある目印…2万匹超の子猫殺処分を減らすために

地域猫活動をしている人たちが管理する「さくら耳の猫」
右耳が「さくら耳」になっている猫
2枚

 「さくら耳の猫」ってご存じでしょうか。片耳の先に少し切れ込みが入っていて、桜の花びらのような形になっているのです。彼らは野良猫なんですが、「地域猫活動」をしている人たちが管理しています。地域猫活動とは何なのか「Happy Tabby Clinic」の院長で、獣医師の橋本恵莉子さんに聞きました。

【地域猫活動って何?】

 公園などで朝や夕方、決まった時間に猫にエサや水をやりにくる人を見たことはありませんか。まるで自分のペットのように、日照りの日も雨の日も雪の日もやってきます。エサは、むやみやたらに置いていくのではなく、その公園で暮らす地域猫の分だけ持ってくるのです。なかには、猫のトイレを持ってくる人もいます。もちろん、食べ終わったエサや器、トイレはきれいに片付けて帰ります。「いったい何をしているんだろう」と、不審に思う人もいるかもしれません。しかし、町や公園を汚さないようにエサや水を与えるのは、「地域猫活動」の一環で、人と猫が共生するのに欠かせない活動なのです。

【地域猫に不妊手術をする意味】

 よく見ると、その猫たちの片耳は、桜の花びらの形をしています。これが、いわゆる「さくら耳の猫」。耳の切れ込みは、不妊手術をしている証です。地域猫の不妊手術は、地域猫活動をしている有志の人や、その活動に協力して、手術をしている獣医師たちの協力で成り立っています。

 猫の繁殖力は強力で、あっという間に子猫の数が増えるのですが、不妊手術をすると一定数以上増えることはありません。手術を終えた猫を元の場所に戻すことで、他の地域からの猫の流入を防ぐこともできます。縄張りの習性を利用するのです。やがて、地域猫は自然に一生を終え、野良猫の数は次第に減っていきます。

 日本では、毎年、何万匹もの犬や猫が殺処分されるのですが、特に、子猫の数が圧倒的に多く、平成29年度は、2万匹以上の子猫が殺処分されました。地域猫活動によって、その数を減らすこともできるのです。

【地域猫活動を温かく見守って】

 なかには、こうした地域猫活動に眉をひそめる人もいます。「こういう人がいるから野良猫が減らないのだ」と。しかし、そうした冷たい視線を向けられると、真夜中に秘かにエサをバラマキにくる人が出てきます。ペットとして飼うでもなく、不妊手術をするでもなく、エサや水の入れ物は放ったらかし。管理されていない野良猫の数はどんどん増えていき、糞尿の臭いや食べ残したフードや容器も放置され、ゴミと化してしまいます。こうなってしまうと悪循環。猫にエサをやる人と、猫が嫌いな住民の溝が深まってしまいます。

 ただ単にエサや水を与えるだけではない。人が野良猫たちをきちんと管理することで、猫と人が共生できる町づくりができる地域猫活動。猫に限らず、犬や鳥など、動物が暮らしやすい町は、人も暮らしやすいのではないでしょうか。(神戸新聞特約記者・渡辺陽)

◆橋本恵莉子(はしもと・えりこ)Happy Tabby Clinic院長。大阪府立大学農学部獣医学科卒業。2017年度不妊手術数…約1500匹。大阪ねこの会の一斉不妊手術に参加。保護猫シェルターにて感染症対策セミナー講演、松原市役所にて市民向け地域猫セミナー講演するなど精力的に活動。

◆渡辺陽(わたなべ・あきら)大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。フェースブック(https://www.facebook.com/writer.youwatanabe)

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