次の「カメ止め」はこれだ!!新人監督の「あみこ」に関西熱視線

 制作費わずか300万円ながら、社会現象を巻き起こした映画「カメラを止めるな!」を引き合いに、「次の『カメ止め』はこれだ!」と映画関係者の間で熱い注目を集めている作品がある。新星・山中瑶子が大学をドロップアウトした19歳から20歳にかけて作り上げた監督第1作「あみこ」。2017年のぴあフィルムフェスティバル(PFF)アワードで観客賞を受賞したほか、あの坂本龍一や向井秀徳(ZAZEN BOYS)らも絶賛したことで話題が沸騰し、既に公開された関東の各劇場でも大きな反響を呼んだという。

 「関西でも『あみこ』旋風を」と願う劇場関係者らの熱意で、12月には大阪、京都、神戸のミニシアターでの公開も決定。中でも神戸の元町映画館は担当者が「これはすごい」と作品に心底惚れ込み、独自で宣伝に乗り出した。「あみこ」の何がすごいのか?「僕らの世代のための映画」と力説する同館スタッフの宮本裕也さん(27)を直撃した。

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 「『この作品の宣伝をした』と将来自慢したい。山中監督は日本の映画界にとって必ず重要な存在になる。それくらい撃ち抜かれました」

 開口一番、早くもヒートアップする宮本さん。ひとまず落ち着かせ、「あみこ」について説明してもらった。

 「『あみこ』は制服姿の女子高校生が主役の、一見するとよくある青春映画です。しかし、わずか66分の上映時間で物語が進化し、主人公の『あみこ』がどんどん得体の知れない存在に変わっていく。もちろん映画としてはまだ荒い部分もありますが、一人の少女の成長ものとしてまとめ上げる手腕がすごい。次回作がこんなにも楽しみな日本の若手監督は本当に久しぶりです」

 本作はスタッフ、キャストをSNSで募った「純度100%のインディペンデントムービー」(チラシより)。「人生頑張っても仕方がない。どこへ行こうが意味はない。どうせ全員死ぬんだから」。そんなあみこが、超ニヒリストながらサッカー部の人気者アオミ君と恋に落ちる物語だ。全編を貫く“初期衝動”のエネルギーがPFFで熱狂的に迎えられ、ベルリン国際映画祭や香港国際映画祭など、海外の映画祭にも招待されるなど、「あみこフィーバー」が吹き荒れているという。

 2014年10月から元町映画館で働く宮本さんだが、「基本的にはシネコンで上映されるような大作が好き」な青年。「あみこ」の劇中の台詞に倣うなら、「あんな男、大衆文化じゃん」と言われてもおかしくない側の人間だ。

 「でもこの映画は刺さった。これは『カメ止め』同様、今このタイミングで見逃したら絶対にダメなヤツです。関西でも盛り上げないと!」

 この熱意、山中監督には届いているのだろうか。コメントを依頼すると、こんな熱いメッセージが返ってきた。

 「『あみこ』は当時18~21歳のキャスト、スタッフだけで作った映画です。その若い感性がより共有できるであろう同世代の方に宣伝していただけるのはとても心強いです!」

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 12月1日から第七芸術劇場(大阪・十三)、8日から出町座(京都)、元町映画館で、いずれも1週間限定で上映。元町映画館では9日、山中監督と出演者の一人で兵庫出身の長谷川愛悠さんによる舞台あいさつがある。(神戸新聞・黒川裕生)

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