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橋本健元神戸市議も刑事告発した孤高のオンブズマン

 「できないと思う心を変えてみよう」。市民オンブズマン兵庫の代表を務める森池豊武さん
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 税金の使い道に目を光らせ、行政、議会を相手に闘い続ける男がいる。市民オンブズマン兵庫の代表を務める森池豊武さん(70)。これまで兵庫県や神戸市を相手に公金不正流用や職員への不当な手当の支給、談合などを明るみにし、「放っておいたら無駄になっていたであろう税金の累積額は700億円以上になる」と試算。9月には政務活動費の不正受給が判明した橋本健元神戸市議の刑事告発に踏み切り、さらなる疑惑解明へ追及の手を伸ばす。報酬ゼロどころか持ち出しでの活動が続くが「だれもがおかしいと思うことを見過ごすわけにはいかない」との思いが活動を支えている。

 同じ筆跡に見える異なる宛て名の数々。世間相場と10倍ほどかけ離れた発注額。単に文字と絵を並べただけのチラシに約40万円のデザイン料。毎月計ったかのようにほぼ100万円ずつ発生する調査委託費用…。

 神戸市議会議員が政務活動費として支払った領収書を洗い出していくとさまざまなアラが見えてくると森池さんは言う。橋本健元神戸市議の所属していた自民党会派に限ったことではなく、他会派のそれを見ても民間企業の感覚とは大きくずれた常識がまかり通っていることが分かる。

 「橋本健元神戸市議もおそらく最初は気概を持って議員になったんやと思います。だれに教わったか、もらえるお金ならもらわな損と思ってだんだんと不正に手を染めていったのでしょう。こんなことぼくら市民がちまちまとやるより、はるかに調査権限を持つ議員が調べた方が早いのに議員はだれも立ち上がらない。みな同じ穴のむじななんやとすれば、議会に自浄作用が期待できるはずもありません」と断じる。

 オンブズマンはスウェーデン発祥で「行政監察官」を意味する。日本では1980年に大阪の弁護士グループが立ち上げたのが始まり。森池さんは大学の非常勤講師として法社会学を教えていた1996年、知り合いの弁護士に頼まれ、当時官官接待の温床となっていた兵庫県の食糧費の使途の実態調査にかかわったことを契機に同年11月に市民オンブズマン兵庫を設立。以来、神戸市に納められた水道メーターをめぐる談合、ごみ収集を担当する作業者に月50万円の手当てが支払われていた実態などを明らかにしていった。また号泣会見を演じた野々村竜太郎元兵庫県議を刑事告発して勝訴している。

 市民からの内部告発、新聞や週刊誌の記事など調査の入り口はさまざまだ。おかしいと思えるのもについて自治体に情報公開を求め、不当、違法性があれば住民監査請求をし、それでもらちがあかないときな住民訴訟に打って出る。「住民監査請求をしても9割は棄却され、住民訴訟にいたってはまず99%勝てません。でもその行動を起こすことで実態が少しでも多くの人に知られ、抑止効果が働くことにつながれば」。

 活動資金は市民オンブズマン兵庫の会員150人から振り込まれる年会費と篤志家のカンパに頼るが、事務所の家賃と文書のコピー代、訴訟費用などで消える。文書作成に追われる時は週5日事務所に泊まりこむこともあるというが、活動はすべて無償だ。「税金の無駄遣いを止めても、裁判に勝っても、ぼくらのところには1円も転がり込んできませんが、少しずつでも世の中が良いほうに変わってくれるなら」との思いが前を向かせる。  

 サポートするスタッフのなかには90歳の人もいる。「若い人にいかにかかわってもらうか、そのためにも活動資金が回るシステムをつくっていくのがこれからの課題」だ。森池さんのもとには「追及が手ぬるい」などという声も寄せられる。「そう思うのならぜひ自分で動いてほしい。ぼくらがやっていることはやろうと思えばだれでもできることですから」。そして、そんな人たちに森池さんはいつもこう伝えている。「できないと思う心を変えてみよう」と。(デイリースポーツ特約記者・山口裕史)

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