C大阪・柿谷には代表を変える力がある

 今、サッカー日本代表で一番見たい選手といえば、誰もが彼の名前を思い浮かべることだろう。C大阪MF柿谷曜一朗(23)。今季からクラブのエースナンバーである背番号8を背負い、類いまれな技術と決定力でここまでJ1得点ランク2位の9得点(9日現在)を挙げている。東アジア杯(20~28日、韓国)での代表初招集が有力視される桜のエースが、その胸中を明かした。

 “ミスターセレッソ”の代名詞でもある背番号8。森島寛晃(現C大阪アンバサダー)、香川真司(マンチェスターU)、清武弘嗣(ニュルンベルク)と受け継がれた栄光の番号を、今季から背負うのが柿谷だ。

 「“番号負け”するのも嫌ですし、堂々と自分がセレッソの8番なんやというのを見せていかないといけない。(香川)真司君やキヨ(清武)と比べられるのは僕の宿命ですけど、2人の頑張りを受け継ぐだけで競争みたいなことは全然思っていないです。8番は森島さんそのもの。森島さんの全てが詰まった番号なので、サポーターの思いと共に戦っているつもりです」

 昨オフには海外移籍がほぼ決まりかけていた。だが、森島氏から「8番をつけて1年やってほしい」と打診され残留を即決した。欧州に渡れば代表への扉も開かれ、違ったサッカー人生を歩んでいたかもしれない。

 「やると決めた以上、僕はこうしたら良かったなんて絶対思わない。ここで8番をつける以上のことはないと思っているし、それだけに没頭できる自分でいいです」

 決意を胸に迎えた開幕戦では、チームを14年ぶりのJ1開幕戦勝利に導くゴールを決めた。

 「人生であれ以上うれしいゴールは多分ないと思います。今でも暇な時は家で見てます。大音量でね。(扇原)タカのパスくらいからワーッとなってきて、シュートを打った時には歓声がブワーッって。ヤバイくらい鳥肌が立ちますよ!生涯のベストゴールです」

 4歳からC大阪の育成組織で育ち、クラブ史上最年少の16歳でプロ契約。同期入団にはあの香川がいた。だが2人は次第に明暗を分け、遅刻を繰り返していた柿谷は09年6月、J2徳島へ期限付き移籍することとなる。

 「正直サッカーを心の底から楽しめていない自分がいた。試合には出られへんし、注目されてるのはオレじゃないからっていうのもあった。遅刻をそこまで重く考えていなかったし、反抗することで自分をアピールしていたのかなと今は思います。あの時期の僕はセレッソにいるべき選手じゃなかった」

 自らを「邪魔者」と言い、15年間を過ごした愛するクラブを去った。ただ、徳島での2年半は柿谷を大きく成長させた。

 「2歳半、年取っただけですよ(笑)。でも試合のための練習ができるようになった。それまで練習は練習、試合は試合という幼稚な考えでしたが、試合に出続けることによって休息や準備の大切さが分かった。いい時悪い時の気持ちの持って行き方はミノさん(美濃部直彦・現AC長野パルセイロ監督)に何度も言われ口論になった時もあったけど、ミノさんを含め徳島のチームメート、スタッフ全員に感謝しています」

 昨年C大阪に復帰すると30試合で11得点。今季も14試合9得点(9日現在)と決定力を発揮している。ブラジルW杯を1年後に控え、代表に漂う閉塞(へいそく)感を打ち破る存在として期待は高まるばかりだ。

 「日本人である以上(代表には)選ばれたいし、W杯にも行きたいです。ただ、代表の土台というのは出来ているので、選ばれていない僕らがどれだけ刺激を与えられるかというのも代表が強くなる一つのポイント。入った時には自分を出すとか、自分がW杯に行くためにプレーするというよりも、まず監督のサッカースタイルを吸収して、代表の雰囲気を味わうということがすごく大事になる。東(慶悟、FC東京)君と工藤(壮人、柏)君はいい経験ができたと思うので、そこはうらやましかったですね」

 周囲の喧騒(けんそう)をよそに、本人はどこまでも冷静だ。地に足をつけて目の前の1試合1試合に集中するのみ。目指すものは、尊敬してやまない森島氏も手にしたことのないクラブ初タイトルだ。

 「タイトル獲ったら僕は森島さんに鬼のように自慢しますよ。でも優勝トロフィーは森島さんに掲げてもらいたいですね。一番の気持ちをどうぞって。それが目標の一つでもあります」

 そう言って柿谷は、柔らかな笑みを浮かべた。

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