サッカーの2026年W杯北中米3カ国大会は6月11日(日本時間同12日)に開幕する。2014年W杯ブラジル大会で日本代表を率いたアルベルト・ザッケローニ氏(73)は、3月にロンドンで行われた国際親善試合のイングランド戦を現地観戦。W杯の優勝候補を敵地で1-0で破った森保ジャパンの印象や、W杯ブラジル大会の経験を踏まえた展望を聞いた。
-日本サッカー協会の招待でウェンブリー競技場に足を運んだ。
「日本は素晴らしかった。いつものように一丸となって戦う姿に、築き上げてきた強さへの自負が感じられた。ウェンブリーでの勝利は歴史的な快挙だ。どこと対戦しても勝てる」
「私が他国の代表監督だとしたら、日本とは相まみえたくない。イングランド戦が証明したように、世界の強豪に肩を並べている。ただ、これは通過点だ。さらに上を目指して努力を重ねなければならない。サッカーの世界に天井はない。満足すれば取り残される」
-戦いぶりで特に感心した点は何か。
「技巧、速さ、忍耐力、創造性。資質に恵まれた選手たちが、欧州のクラブで大きな経験を積んで力を伸ばしている。そして何より協調性が高く、力を合わせて勝つことができる。選手を入れ替えても同じように機能する。そこが最大の魅力であり、強みだ」
「選手たちが互いの力を引き出し合う日本のサッカーは先駆的だ。私は若い指導者たちにいつも、日本を手本にしろと伝えている。イタリアでは個々のプレーにばかり目が向き、互助精神に基づいたチーム力への意識が希薄だ。W杯出場を逃すのも無理はない」
-ブラジル大会でザックジャパンへの期待は高かったが、1次リーグで敗退した。
「優秀な選手が多く、戦術も磨き上げていた。ただ、世界の強豪に対して遠慮があった。相手に敬意を払うのは大切だが、度を越えてはならない。私は決勝進出を確信していた。悪くても4強には残ると。だが選手たちは消極的になって本領を発揮できなかった」
「当時と今を比べると、技術的な能力に差はない。決定的に違うのは気構えだ。格上と対戦しても『相手よりいいプレーをして、絶対に勝つ』という自信と気迫がみなぎる。この十数年で着実に進化し、実績を積み上げたという矜持(きょうじ)がある。われこそ強豪国という自覚が根付いている」
-本大会の1次リーグではオランダやスウェーデンといった伝統国との対戦が待ち受ける。
「全く問題ない。大事なのは、何も恐れないことだ。日本ほどチーム全体として最大限に出力できるチームはないのだから。他国はどこも8人くらいが好調でも、2人ほどはあまり調子が出ず、少なくとも誰か1人は不調に陥る。日本は誰もが必要な水準を保ち、全体が安定している」
「森保一監督は、もう何年にもわたって高い指導力を証明している。実に優秀だ。練習をつぶさに見たことはないが、試合でのパフォーマンスを見れば、意図した通りにチームの完成度を高めていることが分かる」
-ブラジル大会で主将を務めた長谷部誠コーチの存在は。
「経験と知見の継承はとても大切だ。(ハビエル)サネッティ(パオロ)マルディーニ…。いくつかの名門クラブで指揮を執った私は優れた主将たちに恵まれたが、マコトこそがナンバーワン。生まれながらの主将だ。彼のリーダーシップは世界で勝ち抜くために欠かせない」
-どんなW杯になるか。日本は優勝を目標に掲げるが、勝算は。
「広域開催で、会場によって気候などの条件が大きく変わる。優勝予想は好きではないし、日本に幸運を祈るのは控えたい(イタリアでは幸運を祈ることは不吉だとされる)。プレーしやすい気候になることを願う」
「初戦が大事。実力を出し尽くせばオランダに勝てるが、結果を左右するのは選手の内面の機微だ。相手を敬い過ぎずに自信を持って臨み、目の前のプレーに集中してほしい。究極を言えばサッカーは遊び。楽しめばいい。ブラジル大会では、それを選手たちに伝えきれなかった」
◆アルベルト・ザッケローニ 1953年4月1日、イタリア北部ボローニャに近いメルドラ出身。98~99年シーズンにACミランでイタリア1部リーグ(セリエA)制覇。インテル・ミラノ、ユベントスでも指揮を執った。10~14年に日本代表を率いた。22年W杯カタール大会は国際サッカー連盟(FIFA)の技術研究グループに参加。24年に日本サッカー殿堂入りした。