「全国高校サッカー選手権・1回戦、興国2-0帝京大可児」(29日、Uvanceとどろきスタジアム)
15試合が行われ、6大会ぶり2度目出場の興国(大阪)が帝京大可児(岐阜)を2-0で退けて大会初勝利をつかんだ。聖和学園(宮城)は那覇西(沖縄)を3-0で下した。奈良育英(奈良)は矢板中央(栃木)とのPK戦を制した。夏の全国高校総体で準優勝だった大津(熊本)は北海(北海道)に7-1で、鹿島学園(茨城)は新田(愛媛)に7-0で大勝。優勝4度の青森山田(青森)、水口(滋賀)、広島皆実(広島)なども勝ち上がった。
雲一つない青空のもと、雑念を振り払い、サッカー少年のようにボールを追った。大会前に一部部員による飲酒問題で揺れた中、創部61年目でつかんだ悲願の全国初勝利。六車拓也監督(41)は「歴史を作れて本当にうれしい。難しい状況の選手もたくさんいたが、ぶれずに腹をくくってやってくれた」とねぎらった。
11月1日の大阪府予選で優勝後、岐路に立った。同校によると一部部員が同2日夜に飲食店で飲酒し、3日未明に大阪府内で救急搬送。部内での聞き取り調査の結果、ほかに問題行為がなかったことから飲酒を認めた部員を除くメンバーでの出場を判断したが、世間からさまざまな声が寄せられた。
指揮官はこの日「世間を騒がせてしまい申し訳ない」と改めて謝罪。難局からの再出発前、選手へ強調したのは前向きな気持ちと学校関係者、保護者らへの感謝。「好きなサッカーができるのは当たり前ではない」と気づきを得た。
試合前夜には主将のGK岩瀬颯(3年)がミーティングで「感謝して楽しんで勝とう」と発信。一体感を高めた。後半17分にこぼれ球を詰めて先制し、同23分に右足を思い切り振り抜いて2得点を挙げたFW安田光翔(3年)は「今日楽しめて勝てたことが良かった」とうなずく。2回戦以降も、大事な信念を忘れずピッチに立つ。
◆興国 1926年創立の私立男子校。生徒数は約2500人。サッカー部は1964年創部で、部員数は今大会出場チーム最多の274人。全国高校選手権は2019年度に初出場し、昌平高(埼玉)に敗れて初戦敗退。全国高校総体でも未勝利だった。卒業生にサッカー日本代表MF南野拓実(モナコ)、DF瀬古歩夢(ルアーブル)、ボクシングの井岡一翔(志成)らがいる。所在地は大阪市天王寺区寺田町。