JリーグのYBCルヴァン・カップ決勝に向けて、12大会ぶり3度目の優勝を目指す柏と、3大会ぶり2度目の制覇を狙う広島が31日、試合会場となる東京・国立競技場で冒頭15分を除く非公開での前日練習を行った。柏の日本代表FW細谷真大(24)は、2022年10月に水頭症のため32歳で亡くなった元日本代表FW工藤壮人さんらがつけた柏のエースナンバー『9』を今季から継承しており、13年大会の工藤さんに続く決勝弾へ決意。広島のFW木下康介(31)は、古巣との大一番を前に闘志を燃やした。
柏の9番が再び国立競技場を震撼(しんかん)させる。12年前の決勝は、背番号9の工藤さんが前半追加タイムに頭で決勝ゴール。それ以来となる栄冠まであと1勝の大一番を前に、“継承者”の細谷は「ここで取らないといけないと思っている。しっかりと9番が(点を)取る仕事をしたい」と覚悟を口にした。
燃える理由がある。22年10月に急死した工藤さんが、かつて所属していた両クラブによる決勝。その縁もあり、キックオフ前の選手入場時には工藤さんの娘が審判団をエスコートする予定だ。父ゆかりの番号には娘さんから特別な視線が注がれるであろう。細谷本人も自覚を持っており「また同じ景色を見せたい」と青写真を描く。
日本代表としてもプレーした工藤さんはJ1で通算60得点を記録。決定力の高いストライカーとして柏では11年のJ1優勝、12年度天皇杯、13年の現ルヴァン杯制覇に貢献した。背中を追う細谷は、9番の前にも工藤さんが背負っていた19番を受け継いだ。工藤さんが急死した翌年には、得点後に胸のエンブレムにキスをする工藤さんのゴールパフォーマンスで敬意を表していた。
今季J1は主に後半からの出場ながらチームトップの8得点。川崎とのルヴァン杯準決勝第2戦では同点&決勝弾を奪い、第1戦の1-3からの大逆転劇に導いた。13年大会の工藤さんに続くMVPも「点を取っていれば見えてくる」と視界に入れている。
広島とは今季リーグ戦で2試合ともドロー。実力は拮抗(きっこう)している難敵だが「ここで決着をつけたい」と“三度目の正直”を狙う。リーグ戦との2冠へ向けても「まず1冠取る」と、9番細谷が頂点に導く。
◆2013年大会決勝VTR 柏が浦和に1-0で勝ち、14大会ぶり2度目の優勝を果たした。浦和に主導権を握られる展開だったが、前半追加タイムにFW工藤壮人が頭で決勝ゴール。劣勢が続く後半も守備を固めてしのぎきった。2010年のJ2優勝から4季連続での国内タイトル獲得。MVPには工藤が選ばれた。攻守の要だったMF大谷秀和ら主力5人を出場停止と負傷で欠く非常事態の中、つかんだ栄冠だった。