井上尚弥 史上最多に並ぶ世界戦26連勝「アウトボクシングもいけるでしょ。誰が衰えたって?」 最後は来場・中谷に対戦呼びかけ
「ボクシング・4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ」(14日、IGアリーナ)
モンスターがまた偉業を成し遂げた。世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(32)=大橋=がWBA世界同級暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(30)=ウズベキスタン=に3-0で判定勝ちし、4団体の王座を防衛。ヘビー級で一時代を築いた米国のジョー・ルイス、世界5階級制覇を成し遂げた米国のフロイド・メイウェザーに並ぶ史上最多の世界戦26連勝を達成した。
尚弥は「キャリア最大の強敵」と位置づけた難敵を完封し、史上最多に並ぶ世界戦26連勝の新たな金字塔を打ち立てた。スピードで圧倒しながら、足を使って翻弄(ほんろう)。相手を危険水域に入れず、逆に強烈なボディーを打ち込んで動きを止めた。プロ2度目のダウンを喫した5月のラモン・カルデナス(米国)戦とは打って変わった守備型スタイルで12回を戦い抜くという驚きの展開を見せ、「アウトボクシングもいけるでしょ。誰が衰えたって?」とおどけながら勝ち誇った。
セミで武居由樹(大橋)が王座から陥落し、超満員の会場に流れた不穏な空気を一掃した。KOを狙えそうなシーンでも「今回は我慢がテーマ」とグッとこらえ、絶えずステップを踏んで安全な距離を保った。ラウンド間には父・真吾トレーナーから「このままでいいんだよ。行きすぎるな」と後押しを受けた。「アフマダリエフ選手の実力を評価していたから、このパフォーマンスをすることができた。打ち合いに挑んでいたら違う結果が訪れていたので、この戦い方が大正解だった」と胸を張った。
16年リオデジャネイロ五輪銅メダルでパワー、テクニックを兼ね備えるウズベキスタンの猛者に対し「判定決着でもいい」と警戒心を強めて準備してきた。アフマダリエフに唯一勝っている元WBA&IBF統一王者マーロン・タパレス(33)=フィリピン=を招へいし、帝拳所属の世界ランカー4人とスパーリングを重ねた。8月上旬には帝拳ジムでプロ初となる出稽古を敢行した。
プロ31戦目で守り勝つという“新境地”を打ち出し、あらためて隙のない怪物ぶりを発揮した。大橋ジムの大橋秀行会長(60)は「ここ何年かで今日が一番いい試合だった。KOは一番の魅力だが、判定でもここまで魅せられるボクサーになったんだなと確信した」と称賛した。
12月にはサウジアラビアの大型興行への初上陸を予定しており、さらに来年5月には中谷潤人(27)=M・T=とのドリームマッチを計画している。来場していた中谷が引き揚げるのを「中谷君!」とリング上から呼び止めると、「あと1勝、12月にお互い頑張って(来春)東京ドームで盛り上げましょう」と改めて宣言し、熱狂のまま大観衆を帰途に就かせた。
◆井上尚弥(いのうえ・なおや) 1993年4月10日生まれ。神奈川県座間市出身。相模原青陵高でアマチュア7冠。12年10月プロデビュー。14年4月にWBCライトフライ級、同年12月にWBOスーパーフライ級、18年5月にWBAバンタム級の王座を獲得。19年11月にワールド・ボクシング・スーパーシリーズで優勝し、22年12月に世界主要4団体王座を統一。23年7月にスーパーバンタム級2団体王者となり、4階級制覇。同年12月に4団体の王座を統一した。右ボクサーファイター。





