「正直こんなにすごい技術戦のタイトルマッチは見たことがない」長谷川穂積氏が井上尚弥戦を解説
4団体統一世界スーパーバンタム級王座戦が行われ、統一王者の井上尚弥(大橋)が、WBA暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)に判定勝ち。ジャッジが7~8ポイント差をつける圧倒的な内容で防衛に成功した。デイリースポーツ評論家・長谷川穂積氏が、この戦いを分析した。
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井上尚弥選手のパーフェクトな試合内容だった。スピードのある左ジャブでペースをつかみ、フットワークを使って相手にパンチを当てさせない。ラウンドが進むにつれて、少しずつアフマダリエフ選手との技術の差が明確となり、ボクシングをレッスンしていた。正直、こんなにすごい技術戦のタイトルマッチは見たことがない。これだけのテクニックと戦略を見せつけられたら、尚弥選手に勝てるボクサーはいないと思う。
連続KO勝ちが途切れたとはいえ、判定でも十分に中身のある試合ができるということを実証したことで、本人にとってもリセットできたのではないか。今後もこのスタイルでいいし、このボクシングを続けていけば、フェザー級に階級を上げても大丈夫だと思う。
アウトボクシングに徹したスタイルだと、つまらないと言われることもある、だが、この日は全くそんなところがなく、1ラウンドの3分間が過ぎるのが本当に早かった。ハイレベルの技術を駆使する戦い方は脳が疲れるので、どこかで集中力が途切れてしまうものだが、尚弥選手はそれを見せることはなかった。根本的な体と足のスタミナがあり、最後までスピードも衰えなかった。改めてボクシングIQの高さを示したし、持って生まれたスピード、パンチ力、踏み込みの速さが存分に発揮された素晴らしい『レッスン』だった。





