同一興行で2選手が開頭手術「偶然で片付かない」JBC安河内事務局長は相次ぐ事故に悲痛 東洋太平洋王座戦ラウンド短縮案、水抜き減量の影響も議論へ
日本ボクシングコミッション(JBC)は4日、2日に東京・後楽園ホールで開催されたプロボクシング興行に出場した神足茂利(28)=M・T、浦川大将(28)=帝拳=の2選手が試合後に都内の病院に救急搬送され、いずれも「急性硬膜下血腫」と診断されて緊急開頭手術を受けたと発表した。JBCの安河内剛本部事務局長(64)が都内で取材に応じ、「1つの興行で2人も硬膜下血腫になるという例は世界を見ても希有。長くこの業界にいるが、国内では初めて」と悲痛の表情で受け止め、「因果関係を究明するのは難しいが、偶然では片付けられない。何か原因があるんじゃないか」と、早急に原因究明と対策構築に動く考えを示した。
2日の同興行では、第4試合で行われた日本ライト級王座挑戦者決定8回戦で最終回に猛攻を受けた浦川がTKO負けで失神し、病院に救急搬送された。さらに、メインで行われた東洋太平洋スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦で、同級5位の神足が王者・波田大和(帝拳)と大接戦を繰り広げた末、引き分け決着。王座奪取を逃した神足は膝から崩れ落ちたものの、すぐに自力で立って歩いた。しかし、控え室に戻ってから意識朦朧となり、医務室から病院に直行していた。なお、この試合はダウンシーンはなかった。
浦川は医務室で意識が一時回復したものの、救急搬送された際に意識がなくなり、手術に至ったという。神足は試合直後は自力で歩いて控え室に戻ったものの、その後に意識を失って救急搬送された。安河内事務局長は2人の容態について「これから1週間~10日が脳の腫れが出やすいので、数日間(容態を)しっかり見ていくことになる」と報告した。
今年5月24日には、IBF世界ミニマム級タイトルマッチで敗れた前王者・重岡銀次朗(25)=ワタナベ=が試合後に意識を失い、病院に救急搬送されたが、「急性硬膜下血腫」と診断されて開頭手術を受けた。国内で試合中の事故が相次いでいる緊急事態を受け、安河内事務局長は「今は(選手の)オフェンス力が飛躍的に上がっている実感がある。いろんな角度から強弱をつけたパンチを打っていく。また、日本のボクシングの特長として諦めることがなく、折れない心がある。そこが名勝負を生む一方で、ダメージを考えないといけない。(当該の)2試合は相当パンチのある選手だったので、そういう意味では(改めて)ボクシングの恐ろしさも垣間見たのかなと感じた」と私見を述べた。
今後は原因分析を進めるほか、対応策として試合当日の戻し体重の制限や水抜きによる減量の危険性の分析、格闘技団体ONEが過度な脱水を制限するために採用しているハイドレーションテストの効果性などについても議論するという。
また、現在12回戦で行われている東洋太平洋タイトルマッチについて、権限を持つJBCの判断で10回戦に短縮する案を明かした。「やろうと思えばできる。ラウンドを短くしたら事故がなくなるかはわからないが、わからないからやらないという場合ではない」と緊急事態であることを強調し、「今まで10年間なかったもの(事故)が急に続くということは、何か(原因が)あるかもしれない」と急務となった対応に悲壮感を示した。





