井上尚弥の凄さを長谷川穂積氏が解説「完全に見切ってからはセオリー通りボディーから攻めていく」

 世界スーパーバンタム級4団体タイトルマッチで、統一王者の井上尚弥(大橋)が、挑戦者の金芸俊(韓国)に4回2分25秒、KO勝ちし、4団体の王座を防衛した。WBCとWBOは4度目の防衛で、IBFとWBAは3度目の防衛に成功。デイリースポーツ評論家・長谷川穂積氏が、この戦いを分析した。

  ◇  ◇  

 井上尚弥選手はいい立ち上がりから、相手にジワジワとダメージを与えて危なげない勝ち方だった。急きょ代役として挑戦者になった金芸俊選手が、吹っ切れて負けて当たり前という気概で臨んでくると、ちょっと怖いなというのはあったが、最後はKOで仕留めてみせたのはさすがだった。

 金選手は急な世界戦でもやれることはやっていたし、パンチをもらわないようにディフェンスが8割くらいの戦い方をしていた。それでも4回でノックアウトしてしまう。上を狙わず、ボディーから組み立てる攻め方は教科書通りで、誰にでも見本になるボクシングだった。

 今回の試合で改めて感じたのは、相手の力をきちんと見切るためには、面白いとか面白くないとかではなく、しっかりと分析するまで自分のスタイルを貫ける尚弥選手のハートの強さだ。格上とか格下とか関係なく、冷静に自分のボクシングをして距離を測り、完全に見切ってからはセオリー通りボディーから攻めていく。徐々にはめていって最後は倒し切るというのが、尚弥選手のストロングポイントと言えるだろう。

 しかもケガをせず、ダメージも全然受けなくて終われたのも大きい。今後の海外での試合でも、もう勝つだけではなくて、どんなパフォーマンスをして勝つかを求められている。そこまでのレベルに達していると思う。

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