井上尚弥 2年ぶり凱旋星 難敵ディパエンを8回TKO 世界戦17連勝に更新
「ボクシング・WBA・IBF世界バンタム級タイトルマッチ」(14日、両国国技館)
WBA・IBF統一世界バンタム級王者の井上尚弥(28)=大橋=がWBA同級10位・IBF同級5位アラン・ディパエン(30)=タイ=を8回TKOで破り、WBA6度目、IBF4度目の防衛に成功した。世界戦17連勝で自身の日本最多記録を更新。今後は4団体統一を目指すが、スーパーバンタム級に階級を上げる可能性も示唆した。
完璧な凱旋にもモンスターは不満だった。日本ボクシング史に残る激闘の末に勝利した19年11月のノニト・ドネア(フィリピン)戦から約2年ぶりに日本のリングに立った尚弥。序盤はガードを固める慎重姿勢のディパエンと距離の探り合いが続いたが、3回からは無数の左ジャブを次々と突き刺していった。
相手の攻撃は華麗な身のこなしと固いガードでほぼ完封。連打も交えて圧倒するが、時折効いてないようなフリをするディパエンは倒れない。「判定も頭をよぎった」という尚弥は流れを変えようと父の真吾トレーナーと相談し、ボディー狙いに作戦変更。そして8回、連打からの左フックでダウンを奪い、即座に連打を浴びせてストップを呼んだ。
戦前には「期待、想像を超える勝ち方」「リードパンチで倒す」などと宣言していた尚弥は、TKOまでフルマークの完勝にもかかわらず、リング上で「予想をはるかに下回る試合をしてしまい、申し訳ありません」と謝罪。練習していたというジャブには手応えを感じていたが「これ効いてるのか、というぐらい表情に出さず、こっちがメンタルやられそうで。オレ、パンチないのかなと思うぐらい」とディパエンのタフさに感心した。
世界に名をとどろかすモンスターは今なお進化を続ける。所属ジムの大橋秀行会長は「また強くなっている。コロナ禍なのに急上昇。練習が試合になっている。基本の練習もしながら。あの時期にああいう練習ができているのは彼のすごさ。一発パンチをもらったら修正していくし、貪欲」と驚嘆するほどだ。
次に控えるのは来春に予定されるビッグマッチ。目標の4団体統一へ王座統一戦を希望するが先行きは不透明で、1階級上のスーパーバンタム級挑戦も示唆する。「また来年、日本か海外になるか分かりませんが、また皆さんの前でいい試合ができるように頑張ります」と意気込んだ。