【長谷川穂積の拳心論】ボクシングに救われた拳四朗 今後はボクシングに恩返しできる試合を

 「ボクシング・WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ」(24日、エディオンアリーナ大阪)

 王者の寺地拳四朗(29)=BMB=が挑戦者で同級1位の久田哲也(36)=ハラダ=を3-0の判定で退けて8度目の防衛に成功した。2回に右ストレートでダウンを奪い、連打を浴びる場面もあったものの、手数と有効打で上回った。2020年に起こした不祥事による処分が明けてからの初戦に勝利し、試合後は涙を流した。敗れた久田は引退を表明した。

  ◇  ◇

 拳四朗選手にとっては、実力や技術以外のものが試合を支配した特別な日になった。立ち上がりの1回は驚くほど動きが硬かった。2回にダウンを取ってほぐれたが、これまで見たことがないような硬さだった。不祥事の重圧や恩返しへの責任。僕らが想像できない思いを抱えて誰より苦しんできたことがよくわかった。

 久田選手の気迫も負けてなかった。僕の35歳9カ月という世界王座奪取の最年長記録がかかっていた彼は、2カ月前に僕を訪ねてきてくれた。その時には正直に今のままでは勝てないと話をしたが、2カ月で技術的な底上げを果たしてきた。ジャブをもらいながらやろうとしていたことはできていた。36歳ともなれば体力も反射神経も落ちるものだが、今持っているポテンシャルは全部出せていた。

 ポイントは開いたが、王者の重圧と挑戦者の執念が日本人同士の好試合をつくった。今回、拳四朗選手はボクシングに救われたのだろう。みそぎを終えて、今後はボクシングに恩返しできるような試合を見せてほしいし、楽しんでボクシングをしてほしい。

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