下田ワールドに新たな生命を吹き込む 六角精児×下田逸郎(1)

 リハーサルを行う六角精児(左)と下田逸郎
2枚

 俳優のかたわらバンド活動を続ける六角精児さんが、シンガー・ソング・ライター、下田逸郎さんの楽曲をカバーしたアルバム「緑の匂い」がこのほどリリースされた。役者としてくすぶっていた頃、生きる力を後押ししてくれた下田さんの歌の世界を自身で表現する願ってもない機会を得て「1人でも多くの人に下田さんの歌に触れてもらえるきっかけになれば」と話している。

 下田さんは1970年代初頭からシンガーソングライターとして活躍し、桑名正博さんの「月のあかり」の作詞、石川セリさんの「セクシィ」の作詞・作曲を手がけるなど提供楽曲も数多く、69歳になる今も精力的にライブ活動を続けている。

 六角さんが下田さんの歌に触れたのは20代後半のころ。自分の力不足を痛感し、舞台の世界から離れるべきか悩んでいたときだったと言う。「“飄々”という歌に“その街で夢みるならばゆっくりと見抜くのさがんじがらめの幻その向こう側へ”という歌詞があって、急がずともしっかり前を向いて進んでみようと元気をもらいました」と振り返る。

 「人間の深い心理を突いていて、年齢を重ねるごとに解釈が変わる。だからいつ聴いてもああそうなんだと思えるんです」と下田さんの歌詞の持つ力を語る六角さんは自身のバンドでつくったCDアルバムで下田さんの「早く抱いて」を収録。これがきっかけとなって、東京・下北沢のライブハウスのマスターの計らいで出会うこととなり、二人でアルバムを

つくろうという話へと進んでいった。

 アルバム作りに当たって六角さんが歌いたい曲として選んだ20曲を見て、下田さんは「正直だけど器用に生きてきたやつじゃない」と自分に重なる部分を感じたという。これらの曲をベースに、足したり引いたりしながら下田さんが作り上げたのは、下田さん自身の人生を投影したストーリーと歌を組み合わせた「唄物語」だ。

 ギャンブルにおぼれ、借金に苦しんだ過去を乗り越え、俳優としての地位を確立できたのは周囲の助けがあったからと話す六角さん。「尊敬し、あこがれる下田さんにかかわれるチャンスが得られたのも役者を続けてきたからこそ。そして下田さんの唄を歌うことは僕にとっての新たな挑戦」と言いながら「あの山に登りたいなら今すぐにふもとまで出かけて行けよ」と“飄々”の歌いだしの歌詞で今の気持ちを代弁してみせる。

 7月5日、神戸チキンジョージで行われたライブのリハーサル中、“1999年のラブソング”を歌い終えた六角さんに下田さんはこう声をかけた。「俺はほとんど歌わない唄なんだけど、いい唄だなあ」。六角さんのストレートで情感ある歌いっぷりが下田ワールドに新たな命を吹き込んでいる。

 「緑の匂い」リリースを記念した六角さんと下田さんのライブは、7月21日(金)、22日(土)、下北沢 ラ・カーニャでも開かれる。

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