テレビでの活躍中のお笑いコンビは“漫才師”の肩書はあるものの、日常的に漫才をしていないコンビが大半。そんななか、ハイヒールはリンゴとモモコそれぞれが売れっ子でありながら、いまでも劇場で漫才を披露している稀有な存在でもある。リンゴの不妊治療やモモコの出産後の体調不良で、一時期漫才から離れたが２０１２年１２月、芸歴３０周年を迎えたことを機に、舞台復帰。テレビと劇場で活躍する女性漫才師のプロトタイプとして活躍するリンゴが、漫才にかける思いと後輩女性芸人への思いを語った。

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　どの仕事より漫才が一番しんどい。なんでこんなしんどいことやっているんやと思うけど、やれるときにやっておこうと。余力というか…精神的に余力がないと漫才はできない。ネタも考えなあかんし、お客さんの求めているクオリティにも応えないといけませんから。

２０１２年１２月に、８年ぶりに漫才をまた始めたんです。でも漫才に復帰した当初は、以前やれていたことができない。「ハイヒールはテレビで見てるけど、劇場で漫才見たらたいしたことないな」というかげの声に、私もモモコも打ちのめされた。もう漫才しなくてもいいかなという気もありました。

　でも自分らは漫才師やし、「今いくよ・くるよ」のいくよ姉さん（２０１５年５月他界）、その前に「海原さおり・しおり」のしおり姉さん（２０１４年１月他界）のこともあり…そうなると漫才をやりたくてもできないんですよ。中田カウス・ボタン師匠は５０年やってらっしゃいますけど、それは奇跡に近い。「横山やすし・西川きよし」も、きよし師匠がおひとりで活躍されてても、もう漫才はできない。私たちは漫才ができる状況なのになんでやらないのかと。だったらもう一度きちんと漫才しようと決めて、ネタの稽古も月に２回、スケジュールを空けてやってます。

　お互いにピンの仕事もしてるんで、スケジュールの調整が難しい。だけどマネジャーが頑張ってくれて、月に１０回は漫才舞台をやらせてもらってる。やっぱり月１０回は立たないと、キープ以上のものはできない。間というか、漫才は生きているものですから。

　それに女性漫才師がこういう風に仕事を続けていく…私も結婚させてもらい、モモコみたいに「子供を育てながらこんな仕事できるのよ！」という姿を後輩に見てもらいたい。若手の子たちが漫才を辞めたくなっても、先輩にそのモデルがいたら頑張れると思うんですよ。女性漫才師がそれぞれ１人の仕事があって、２人の仕事があって、さらに漫才もやってというのは誰もやってなかったことやから。しんどくても頑張ろうと。

　漫才といえばこの間、海原やすよ・ともこが出てるのを見たんですが、そのネタは当然面白い。お客さんが笑うのはもちろんやけど、バックヤードのスタッフも笑っていたんですよ。お客さんだけならテクニックで笑わせることできるけど、バックヤードの人が笑うっていうのは、ネタが面白いってことなんですよね。テクニックでお客さんは笑うけど、バックヤードの人はそのテクニックを上手いと評価しても、面白いと感じるかは別。上手いじゃなく、面白いと思わせるのはすごい難しい。でも２人のネタで音声さんとかも笑ってるんです。テクニックも大事やけど、やっぱり面白いヤツには勝たれへん。やすよ・ともこはすごいですよ。

　私たちが若手のころに漫才番組でネタやるときは、女性コンビが少なかったから、必ず出演させてもらってた。当時は実力以上に仕事をもらってたんですよ。でも後輩の「非常階段」が出てきてハッとなった。「私らそんなに実力ない。女やから出してもらってたんや」と。それからは必死になりましたね。いまは実力のある女の芸人がてんこ盛り。ええことやと思います。

　私は毎月「女芸人大祭り」という若手女芸人のイベントのＭＣをやっています。それに出てくれている尼神インターは今やスケジュールがいっぱいの売れっこ芸人ですし、ガンバレルーヤも売れてきた。ゆりやんレトリィバァも動員力がすごいし、女芸人の新陳代謝がどんどんよくなってる。メンバーも変わってきて、いつまでもゆりやん、尼神じゃなく、次の芸人をということになってくる。

だけどそれは上の子がどんどん羽ばたいていって、底上げしようというときのうれしい悩みなんで、ありがたいですね。そんな後輩に私達ハイヒールも刺激をもらって頑張っています。

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【女芸人大祭りvol.７】

３月２１日　２１時開演

東京・ヨシモト∞ホール

出演者　ＭＣ：ハイヒール・リンゴ／尼神インター／ゆりやんレトリィバァ／ガンバレルーヤ／紅しょうが／おかずクラブ／スパイク／ＴＥＡＭ　ＢＡＮＡＮＡほか

ゲスト：千原せいじ／ココリコ・遠藤章造