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デビル雅美は漬物処の店長に プロレスもぬか漬けも地道な努力の積み重ね

柔和な笑顔を見せるデビル雅美さん
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 「デビル雅美」のリングネームを持ち、女子プロレス界で30年間活躍した元女子プロレスラーの吉田雅美さん(56)は現在、北九州市の小倉城天守閣横にある漬物処「糠蔵(ぬかぐら)」で店長を務めている。

 きゅうり、人参、長芋などのぬか漬けと、郷土料理のぬか炊きが同店の自慢。これらを作るぬか床は、およそ140年にわたって代々受け継がれてきたものだ。

 吉田さんの日課は、毎朝6時、ぬか床の壺(1個約15キロ)6個に、手先から肘までを入れて底からかきまぜ、ぬかの状態を管理すること。「ぬか床は生き物。季節や温度によって発酵の状態が変わるので、感覚を研ぎ澄ませ、触り心地や味を必ず確かめます。代々引き継がれてきたぬか床を大切に守っていくのが私の責任」と吉田さん。

 重労働のため前店長からは「腱鞘(けんしょう)炎になるから気をつけて」とアドバイスされたが「一度もなったことがない」とか。「腕だけを動かすのではなく、全身で体を使うことがプロレスで身についているので、全然苦になりません」と微笑む。

 吉田さんは北九州市若松区出身。1978年、全日本女子プロレスに入り、16歳でデビュー。「悪役」のトップレスラーとして活躍し、数々のタイトルを獲得。2008年、46歳で現役引退した。現役時代は「選手、レフリー、観客三者が一体となってこそいい試合ができる」との信念があった。派手な技をみせ、観客を楽しませるため、ひたすら猛練習を積んだ。ただ勝つことよりも、多くの人にプロレスの面白さを伝えたかった。

 だが、40代半ばになると次第に「集中力が欠け、次にやるべきことをするにも、一瞬、間があいてしまい、お客さんが求める『デビル雅美』になりきれなくなってしまった…」。そんな自分が原因で、三者のトライアングルがいい音色を奏でないと気づいたとき、まだ続けたい気持ちもあったが、リングを去る決意をした。

 引退後、故郷に戻ってスーパーで働いていたとき、「糠蔵」の経営者から「丈夫で力持ちで料理が好きな人を探している」と、同店の店長にスカウトされた。

 元々料理は得意だが、ぬか漬けを作るのは初めて。前店長から業務を引き継ぐ1ヶ月間で、ぬか床の管理の仕方などを頭と体に叩き込み、2011年、店長に就任した。

 「最初は苦労しました。漬ける野菜の下処理の仕方や漬けこむ時間などによって、漬物の旨味の出方が違ってきますし、同じ味を常に保っていくためには、毎日ぬか床をかきまぜて、ぬかの状態を確認しないといけません。奥の深い世界で、今も毎日が修行です」

 プロレスもぬか漬けづくりも、「大切なのは日々同じことを繰りかえすこと」。地道な努力の積み重ねこそが、人を惹きつける味をもたらすと吉田さんは信じている。(デイリースポーツ特約記者・西松 宏)

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