スタミナ食といえば焼き肉、ウナギ→疲労回復効果が学術的に認められたものはない→エビデンスが判明したのはトリ胸肉

 食事で疲れを回復させようと思ったら、まず頭に浮かぶのが「スタミナ食」、焼肉やウナギに豚キムチという人も多いでしょう。特にウナギは夏の疲れをとってくれる食材の一番手と思われがちです。しかし、ウナギをはじめこれまで「スタミナ食」と言われてきたもので疲労回復効果が学術的に認められているものは、残念ながらありません。

 日本で2000年代初頭、16億円の国家プロジェクトで、加熱しても煮てもどんな調理をしても失われない、最も疲労回復に効果がある食品成分が発見されました。多くの食品・食品成分を検証してエビデンスが判明したその成分こそ、鶏の胸肉に含まれる「イミダペプチド」です。日本を代表する製薬会社・食品会社18社の協力を得て、各社の商品で使われている成分を一つずつ調べ、実際に抗疲労効果があるかどうかを検証した結果、「疲労」および「疲労感」両方に効果があると認められたのは「イミダペプチド」「クエン酸」「コエンザイムQ10」の3つの成分でした。そのなかでも最も効果があると認められたのが、タンパク質の一種である「イミダペプチド」でした。

 話は変わりますが、渡り鳥が北はアラスカから南はニュージーランドまで、なぜ1万キロ以上休みなく飛び続けることができるのでしょうか。渡り鳥は体重もあり、実際は逆風も吹くなか、長距離を休みなく飛び続けます。これは尋常ではありません。羽も大きいですからかなりのパワーが必要です。なぜ渡り鳥にはこんなことができるのかという研究がなされた結果、渡り鳥の羽の付け根にあたる胸肉にイミダペプチドが豊富に含まれていることが判明しました。

 イミダペプチドの合成酵素は、鳥は羽の付け根の胸肉、魚は尾びれに近い赤身の部分に豊富に含まれ、その動物にとって最も消耗の激しい部位に豊富に存在します。豚であれば体重を支える、ちょうどモモ肉やロース肉にあたる部分。言い換えれば、各動物は進化の過程で、それぞれの動物にとって最も消耗の激しい部位にイミダペプチドの合成酵素を増やし、いちばん疲れやすい部位でイミダペプチドを作り続けているのです。人間の場合イミダペプチドの合成酵素は「脳」に最も多く存在します。ヒトの脳の自律神経、まさに疲労の中枢にイミダペプチドの合成酵素が多量に存在しています。このように極めて効率的なしくみを、生物は生まれながらにして備えているのです。

 さらにイミダペプチドは、1回の摂取で長時間の抗疲労効果が高いことも判っていますが、人間において抗疲労効果を発揮し続けるには、1日200mgのイミダペプチドを2週間摂り続けると良いというエビデンスがあります。イミダペプチド200mgは鶏の胸肉にすると50g相当ですが、消化吸収のロス分を考えて1日100gの鶏胸肉の摂取が一番効果的です。この量で疲労と疲労感に充分効果があるということが学術的に認められています。

 鶏の胸肉100g。焼いても揚げても蒸しても煮ても大丈夫です。鶏の胸肉自体はタンパク質なので加熱すれば変性しますが、動物は体内でイミダペプチドを再合成できるからです。

 コンビニやスーパーで売っている「サラダチキン」。柔らかく蒸した状態の鶏の胸肉が100gほど包装されています。さらに様々な味付けもあり、昼食にひとつ食べれば、最高のパワーランチになります。ただし効果の実感には最低1週間程度、毎日摂取が必要です。でも鶏胸肉ばかり食べていては飽きてしまいます。イミダペプチド200mgは、カツオやマグロであれば150g。豚ロース肉だと130gです。科学的な視点からこのようなデータが実証されている成分は、今でも世界でイミダペプチド以外になく、これは非常に画期的な研究結果といえます。(参考文献:梶本修身『「疲れないからだ」になれる本』三笠書房)

 ◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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