ノロウイルスが大流行する一因 コロナのようにアルコールで死滅しない、ワクチンは臨床試験もままならず

 幼稚園児600人がノロウイルスに感染する集団食中毒が発生したとか、昨冬はノロウイルス大流行というニュースがあちこちで流れました。ノロウイルスには大きく分けて5つのタイプを持つ遺伝子群が存在します。その中でもさらに細分化され、新種の変異株が次々と発見されています。

 ですがこのウイルスに新たな変化が生じていたという事実が、今になって判ってきました。コロナ騒動で皆さんもご存知になった通り、私たちの体はウイルスに感染すると免疫を獲得します。しかし刻々と変異するウイルスには追いつけず、それがあのコロナ騒動を引き起こしたのです。

 そして昨冬大流行したノロウイルスは、実はこれまでと異なる変異株「G-II. P17」が主流となりあの大流行に繋がったということが、ようやく判ってきました。ノロウイルスの変異は2013年ごろから確認され始め、前述のように、最近になってG-II型ウイルス変異株の出現が報告されました。それが昨冬一気に感染拡大したということです。一昨年の冬が暖冬だったのに比べ、昨冬は3月まで寒い日が続き、それだけウイルスが生存しやすい環境になっていた点も影響があるでしょう。

 ノロウイルスはインフルエンザやコロナのようにアルコールでは死にません。次亜塩素酸(いわゆるハイター)でないと死滅させられません。これも大流行する一因です。ウイルスの感染予防の一番手はワクチンですが、ノロウイルス・ワクチンは現在開発中で、臨床試験すらできていません。培養細胞や実験動物に感染しないため、ワクチン開発に大きな制約があるのです。いずれにせよ、我々が新型コロナで騒いでいる間に、ノロウイルスもちゃっかり変異して、人に感染しやすくなっていたんですね。

 ◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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