「ステルス性能」に特化した梅毒、ためらわずに早期検査を 「第2期」見逃さずに完治させねば
梅毒は「第2期」以降、約3年は無症状で経過するから恐ろしく、「第2期」を見逃さずに完治させねばなりません。3年以上経った「第3期」では、ゴム腫などと呼ばれる大きなしこり、心臓・血管・神経・脳・目などに重い障害が現れ、精神的にも不穏になり、最後は死に至ります。ただ現在では「第3期」まで進行する患者さんは、まずいませんからご安心ください。
実は梅毒トレポネーマには、強力な毒素も細胞内に感染する機能もありません。逆に何も持たないことで、宿主の免疫から認識されにくくなる「ステルス性能」に特化した病原体です。その秘密は、この菌の表面構造にあるのですが、そのメカニズムをこの場でご説明しても免疫学の専門家でなければ理解できないので割愛しますが、簡単に言うと梅毒トレポネーマは、増殖スピードや毒性と引き換えに、免疫の監視の目をかい潜る「ステルス」能力が進化した菌と言えます。
幸い梅毒にはペニシリンが著効します。薬剤耐性もないため、内服で完治します。ただし症状によって1~3カ月は飲み続けねばなりません。もう一つ、最近日本でも承認された筋肉注射です。1回から最大3回の注射で治りますが、お尻に注射する針が太いのでけっこう痛いです。
現在では「第3期」になる前に完治できるので、以前ほど恐ろしい病気ではなくなりましたが、ここ10年で日本では若年層を中心に急増しています。兆候を見逃しやすく専用の検査が必要です。特に若い女性は「第1期」での早期発見が難しいので、老若男女を問わず、少しでも身に覚えがあるなら、ためらわずに検査を受けてください。各地の保健所で、いつでも無料・匿名で検査可能です。
◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。





