若いタレントに相次ぐパニック障害…医師が語る“理解されない”心の病

 「町医者の独り言=40=」

 若いタレントさんが相次いで活動休止することが発表されました。パニック障害。体に明らかな異常がなく、薬物の影響もない状況で、予期せず繰り返されるパニック発作を主な症状とする疾患です。パニック発作とは、原因が何もないのに、突然、激しい恐怖、強烈な不快感が出現する症状で、その高まりは数分以内にピークに達します。

 その際に、動悸、発汗、身体の震え、呼吸困難、このまま死んでしまうのではないか…といった恐怖感などの様々な症状が出現する心の病気のことです。この発作を何回も繰り返し、そのために「また、あの発作が起きたらどうしよう」と過度な不安(予期不安)が出現し、外出することも制限されてしまう病気、それがパニック障害(パニック症)です。初診時に確定診断を下すことは難しいとされています。

 正確な診断基準は存在しますが、似たような心の病もあります。心臓の病気であったり、甲状腺という体の代謝を司る臓器の病気や、副腎という重要なホルモンを放出している臓器の病気、耳や脳の病気なども除外しなければならないこともあります。詳細な問診が大切となり、過去の発作や、他の病気が隠れていないかを詳しく診察する必要があります。

 治療は、薬物療法が第一選択です。その他に、認知行動療法という薬を使わない治療を併用することもあります。認知行動療法とは、一言でいうと物事の捉え方、考え方に働きかけて気持ちを楽にするという治療法です。

 最近はストレス社会の影響のためか、私の知り合いにも同じ病気の方が何人もいるようです。私が医師という職業ということもあり、簡単に自らの病気に関して告白してしまうのかもしれません。人知れず悩みを抱えている人は多いようです。

 私が尊敬している人で同じ病気に苦しんだ先生がおられます。「医師という仕事」という本を執筆された南木佳士(なぎ・けいし)先生です。南木先生が医師になられたころ、肺がんは非常に治療が困難な時代で、確定診断を下せても治療の施しようない患者さんが多く、何百人もの患者さんの死を目の当たりにされたそうです。そして、ある日突然、パニック障害になられたとか。強じんな意志を持つ名医でも、そうなるのだと私は怖さを感じました。

 パニック障害の原因ははっきりとはわかっていませんが、過去のトラウマや大きな事件などがきっかけとなって、パニック発作が出現することもあるようです。繊細で心優しい人や、責任感の強い人がかかりやすいとも言われています。ただ医学的にみると、パニック障害になりやすい性格というのは特になく、どんな人でも発症する可能性はあるのです。

 心の病は目に見えない分、ギリギリまで我慢して急激に悪化するケースもあるようです。みなさんも大きな不安、ストレスなどがあれば、早いうちに友人、ご家族に相談に乗ってもらい、不安があれば専門の先生に受診することをお勧めします。

 ◆筆者プロフィール 谷光利昭(たにみつ・としあき)たにみつ内科院長。93年大阪医科大卒、外科医として三井記念病院、栃木県立がんセンターなどで勤務。06年に兵庫県伊丹市で「たにみつ内科」を開院。地域のホームドクターとして奮闘中。

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