【野球】ヤクルト・増居が高校からプロを目指さなかったワケ
今季プロ初勝利を挙げ、先発ローテ入りが期待されているヤクルトのドラフト4位・増居翔太投手(26)=トヨタ自動車=。滋賀県内屈指の進学校、彦根東時代に甲子園を大いに沸かせ、プロの注目を集めた秀才左腕。意外にも高校ではプロ入りの選択肢は全くなく、慶大に進学した。その背景を追った。
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173センチの小柄な左腕の熱投は、当時大きな話題となった。2018年3月31日。春のセンバツ3回戦で彦根東のエース・増居は花巻東を相手に衝撃の快投を披露する。九回まで“ノーヒットノーラン”。ただスコアは0-0で延長十回に突入し、サヨナラ負けという残酷な結果で終わった。
144球の熱投で2安打1失点14奪三振。幻に終わった快挙達成。悲運のサウスポーが一躍、プロが大いに注目する存在となった。ただ高校3年生だった増居にプロ入りの可能性は全くなかった。当時の思いを明かす。
「プロから注目されているなんて全然思っていなかった。当時、プロ野球選手を目標にしていたわけではなかった。高校から直接、プロに行くというのも選択肢になかった」。高校卒業後、プロ野球の世界に入れる状況だったとしても「(プロに)行っていないと思います。行けたとしても大学に行ってから。そういう感じだった」と当時の心境を説明する。
その決断は、出身高校と無関係ではない。彦根東は滋賀県内屈指の進学校。同校OBでプロ入りしたのは慶大、トヨタ自動車を経た増居で2人目。同校を1954年3月に卒業して毎日(現ロッテ)入りした中川隆以来だった。多くの先輩や同級生と同じように増居も大学進学を志した。
「それ(彦根東の校風)が一番強かったんじゃないかと思う。大学に行くのがセオリーだった。大学受験をするのが当たり前だと思って高校生活を過ごした。大学に行かないと、何もないかなと思っていた。特に夢があったわけでもなく、本当に(将来)何になりたいっていうのはなかった」。当時は京大入りを目指す意向を明かしたこともあったが結局、慶大のAO入試を受験して進学した。
増居が大学3年時の21年度ドラフトで、慶大からソフトバンク2位で正木、オリックス4位で渡部の両外野手が入団したことでプロへの意識が芽生えた。ただ、大学と社会人2年目の2度、指名漏れを経験した。ドラフト指名されたのは高校3年時から7年後、25年度のドラフトだった。遅咲きの逸材は4月19日・巨人戦(神宮)でプロ初勝利を挙げ、ローテ入りが期待されている。
「プロに行って活躍できずに終わるっていう未来(予想)も、もちろんあった。プロ野球の道に行かないという選択肢もあると思った。最後まで行こうとして、ダメだったら自分で区切りをつけられる。やれるところまで社会人で目指してみようと思った結果、運良くこういう形になった」
甲子園でスターになり、高校から直接プロ入りした選手とはまた違った異色のキャリアを歩むオールドルーキー。今後の“サクセスストーリー”が楽しみだ。(デイリースポーツ・伊藤玄門)
