【スポーツ】世界陸上で号泣「何が足りなかったんだろう」村竹ラシッドが導き出した答え 男子110メートル障害5位
陸上男子110メートル障害の村竹ラシッド(23)=JAL=が、9月の世界選手権東京大会で口にした「何が足りなかったんだろう」という言葉の意味を明かした。5位でメダルに届かず、インタビューで号泣。閉幕から2週間が経過し、自身で導き出した“何か”とは-。
もう、その目に迷いはない。自国開催の大舞台の閉幕から約2週間が経過した今月4日のイベント。0秒06差の5位で表彰台に届かなかった理由について、村竹は“答え”を導き出していた。
「時間じゃないですかね、やっぱり。ちゃんとメダルを目指し始めたのが、去年のパリ五輪が終わってからだったので。メダルを取りに行くのにかける“時間”が足りなかったのかなと、今感じている」
昨夏のパリ五輪では、日本人最高成績の5位入賞を果たした。3位との差は0秒12。「(次は)メダルを取ってやる」と自信を高め、この1年間は東京世界選手権での表彰台だけを目標に練習を重ねてきた。
開幕1カ月前の8月に行われたナイトゲームズ・イン福井では、パリ五輪の金メダルタイムを上回る12秒92を記録するなど絶好調。ただ本番では両隣で走るジャマイカ選手の速さにわずかに気を取られ、また序盤のハードルとの接触も絡み、自分の走りを100%発揮できなかった。
「だめだめだった」。世界トップ3に入るためには、自分が想像していた以上に、狙ったレースで好記録を出す強さ、周りの選手に惑わされないメンタルが必要だった。1年間の積み重ねでは“足りない”という結論に至ったという。
レース直後のテレビインタビューで「何が足りなかったんだろう」と、人目もはばからず号泣した村竹。ただ今はそのレースの動画を「数十回」も見返して分析し、受け止められている。今はリフレッシュ期間としてオフを満喫している最中だが、今後はコーチやトレーナーと相談しながら大会出場や強化方針などを決めていく予定だ。
「気持ちは前に向いている。まだまだ陸上はやめないので、長いキャリアのどこかでメダルを取れたら」。これまで競技人生最大の転機には、フライングで2021年東京五輪出場を逃した同年の日本選手権を挙げていたが、また大きな分岐点が刻まれたはずだ。人前で涙を流せるのは妥協なく競技と向き合ってきた証拠。27年北京世界選手権、そして28年ロサンゼルス五輪と、雪辱の機会はまだ残っている。日本人初の世界大会メダル獲得の偉業へ、村竹がここからまた強くなる。(デイリースポーツ・谷凌弥)
◇村竹ラシッド(むらたけ・らしっど)2002年2月6日生まれ。千葉県松戸市出身。父はトーゴ人。小学5年から陸上を始め、松戸国際高を経て順大に進学。24年パリ五輪では110メートル障害で日本人初の決勝に進出し、5位入賞した。今年5月のアジア選手権では金メダル。同8月のナイトゲームズ・イン福井では、12秒92の日本新記録を樹立した。179センチ、76キロ。




