【野球】なぜ阪神・藤川監督は木浪聖也を2軍降格としたのか 新人指揮官のリスクマネジメントに迫る
「阪神1-2ソフトバンク」(20日、甲子園球場)
交流戦最終カードを戦う試合前、遊撃のレギュラーとして開幕スタメンを飾っていた阪神・木浪聖也内野手の姿は甲子園ではなく、2軍本拠地のSGLスタジアムにあった。
2軍残留練習に参加した木浪は、内野ノック、打撃練習に加え、坂道ダッシュを行うなど約2時間、たっぷりと汗を流した。取り組み内容や動きから判断すれば、2軍合流はケガなどのアクシデントではなさそうだ。
満塁時の勝負強い打撃が光る木浪だが、6月の声を聞いてから、バットから快音が聞かれなくなっていた。7試合のスタメンで1安打。今月は9試合の出場で26打数1安打、0本塁打、1打点の打率・038。「7番・遊撃」で出場した12日の西武戦を最後にスタメンから遠ざかり、代打で出場した18日のロッテ戦では空振り三振に倒れていた。首脳陣はルーキー・佐野大陽内野手との入れ替わりで、2軍降格の措置に踏み切った。
延長戦にもつれ込んだ試合後、藤川監督が木浪の出場選手登録抹消について言及することはなかったが、思い切った決断を下したなというのが率直な感想だった。
木浪に代わってスタメン出場を続けている小幡竜平内野手が好調を維持できている点も降格に踏み切れた理由のひとつだろうが、いくら不振とはいえ、もし万が一、小幡に不測のアクシデントがあった場合を考えれば、ベンチに置いておけば、ある種の安心感は保てていたはずだ。4月19日の広島戦で1試合3失策を犯したことはあったが、守備には一定の安定感があった。
聖域なき改革と書けば、いささかオーバーな表現かもしれない。だが、これまで長いスパンを視野に入れた発言の多かった藤川監督は、交流戦で7連敗を含む7勝9敗と苦しみながらも、チームが2位・DeNAに交流戦突入前より1ゲーム差を広げた3・5差をつけた首位に位置していることに加え、残り75試合を見据え、木浪の早期復調を探る手段として大なたを振るったのではないだろうか。そこには当然、他のナインが肌で感じるであろう危機感をあおることも、リスクマネジメントとして含まれているはずだ。
木浪は「そういうの(数や量)はできるんで、ほんとに自分にとってプラスに捉えて、全てやっていきたいですね。練習するだけです。とにかく前を向いて、やれることをこっちでやっていきたいですね」と言葉に力を込めた。
藤川監督は開幕以後、捕手を昨年までの正捕手的存在だった梅野隆太郎捕手から坂本誠志郎捕手の起用を増やし、5月25日の中日戦からは佐藤輝明内野手を右翼でスタメン起用し、森下翔太外野手を右翼から左翼に回し、ラモン・ヘルナンデス内野手、熊谷敬宥内野手、糸原健斗内野手を三塁で起用するなど、勝つための最善策を常に探っている。中継ぎを中心とした頻繁な入れ替えにしてもそうだ。
打った手が即効性を示さなければ、悪手と揶揄されることが多い監督業において、藤川監督は失敗や批判を恐れないように見える。シーズン当初の試合後会見では、パターン化したような発言が多かったように思われるが、ここに来て一歩踏み込んだ発言が増え、球児色が感じられるようにもなってきた。勝てば選手の手柄、負ければ監督の責任。藤川監督の覚悟が見て取れる。(デイリースポーツ・鈴木健一)





