【ファイト】王座陥落の西田凌佑が中谷戦に向けて見せた精神的成長 統一戦で6回終了TKO負け-今後の再戦に期待
8日に行われたWBC・IBF世界バンタム級王座統一戦で、西田凌佑(28)=六島=はWBC王者の中谷潤人に6回終了TKOで敗れ、IBF王座から陥落した。中谷が序盤から猛攻を見せる展開で、西田は3回から反撃に出るも、6回終了後に右肩脱臼により陣営が棄権を申し出た。敗戦でもファンに実力を認識させる健闘を見せた西田。中谷戦以前に見せていた弱さや試合でのギャップ、統一戦に向けて変わっていった精神的な成長に迫る。
あまりに予想できない、そしてもったいない幕切れにも日本中のボクシングファンが沸いた。WBC王者の中谷とIBF王者の西田による史上4例目となった日本人同士の王座統一戦。西田は6回終了後、右肩脱臼の棄権でベルトを失ったが、4団体統一王者・井上尚弥に次ぐ才能と称される中谷と互角に近い戦いを繰り広げ、負けても評価は下がらなかった。
今回の一戦で、ようやく真の実力が全国区に広がった。西田は巧みな距離感とディフェンス、カウンターが優れた技術的なボクサーだが、バンタム級にひしめく日本選手の中で隠れがちだった。中谷だけでなく、キックボクシング出身のWBO王者武居由樹、西田に引けを取らない数々の激闘を見せてきた堤聖也(現在はWBA休養王者)。王者以外にも那須川天心や井上拓真らライバルが多かった。
中谷戦以前は減量のつらさに「ボクシング辞めます」と弱音を吐き、試合前にネガティブになることも多々あった。所属する六島ジムの枝川孝会長は「皆さんも思うやろうけど、どう見ても強そうじゃない」と辛辣(しんらつ)に表現する。
ただ、ひ弱な一面とは正反対に試合本番で相手を御してしまうギャップが西田の魅力。会長が「全然強そうじゃない。せやけど試合になったらそれなりにやるよな」と話すように、プロ4戦目の比嘉大吾戦や昨年5月のロドリゲス戦での王座奪取など、不利予想の下馬評を何度も覆してきた。
中谷戦では、精神的にも一皮むけた。“名参謀”の武市晃輔トレーナーとともに、通常なら1試合1クールの練習を3クール分消化。今まで後ろ向きだった減量も自らカッパを着込み、ニット帽を持参する姿に、同会長も「初めて見た」と驚いていた。中谷戦へのモチベーションの高さが行動を変えたのだろう。
本番では不運に泣かされたが、西田は「完敗。肩をやられるのも中谷選手の強さ。何も言い訳がない」と潔く負けを認めた。ただ、3、4回に中谷の猛打をさばききったのも事実。進退は保留しているが陣営はスーパーバンタム級への転向を示唆しており、負傷のなかった“もしも”の結果が分かる再戦の可能性もあるかもしれない。(デイリースポーツ・中谷大志)




