【野球】阪神・藤川監督の酷評をバネにした才木と梅野のバッテリー いつもとは異なる表情に危機感にじむ
「巨人1-7阪神」(6日、東京ドーム)
この両者、いつもと表情が違っていた。初回に2点の援護を得てマウンドに上がった阪神・才木と女房役の梅野。緊張感漂うグラウンドでも、才木は要所要所でにこやかな笑みを浮かべることの多い投手だが、この日ばかりは雰囲気が違っていた。
時計の針を巻き戻す。4月29日の中日戦。才木と梅野のバッテリーは、同点の五回1死一塁で送りバントをしようとしていた涌井に四球を与えてピンチを広げ、その後、板山、上林に連続適時打を浴びて一挙3点を失った。右腕は6回4失点で3敗目。チームが4連敗を喫した2戦目の出来事だった。
これまで、選手を厳しく責める印象のなかった藤川監督が試合後、「ゲームのリズムが非常に…。才木と梅野がバッテリーで持ってくるような展開じゃないものを持ってきてますからね。本当に100%この今日のゲームに勝つためにベストを尽くせたのかということを、バッテリーとともに自分たちも考える必要があるんじゃないですかね」と具体的な場面を挙げることはなかったにせよ、バッテリーが戦況を苦しくさせ、敗戦の一因になったと糾弾した。
この一戦を境に梅野はスタメンを外れた。7試合ぶりの先発出場は、再びタッグを組んだ才木とのリベンジマッチの舞台でもあった。
予想外のアクシデントに襲われた。6点リードの三回2死一塁から、吉川の鋭いライナーが左手首付近を直撃。治療を経てマウンドに戻ったが、影響が全くないはずがない。秋広に四球。満塁のピンチで甲斐を空振り三振に仕留め、雄たけびを上げた。
五回にも1死からの安打と四球で一、二塁の場面を迎えた。吉川を遊ゴロ、代打・大城卓を空振り三振に打ち取ったが、打球直撃から右腕の制球に少しばかり乱れが見られ、球数102球での降板となった。苦しいピッチングではあったが、無得点に抑えたことも事実だ。
3勝目を挙げた才木は「みんなが初回から点を取ってくれて投げやすい状況を作ってくれたのに、球数が多くなってしまって5回までしか投げることができませんでした。自分が1試合投げ切らないといけない展開でした。自分の投球が恩返しができるようにしたい」と満足せず、この日の投球に及第点を与えることはなかった。
藤川監督は才木について「苦しみながらと言いますか、何とかこう自分の中でシーズンの軌道に乗ろうとしている姿ですけど、まあまあ、きっちりとは帰ってきたんで。その辺りは次に、というところですね」と手放しで褒めることはなかったが、一定の評価を与えた。
綿密に打ち合わせを重ねた。梅野が言う。「今日は球数をかけてでも抑えるっていうところで。結果が出て良かったかなと。ホントにしっかり粘りながらバトンを渡してくれたんで」。本来の調子ではなかったにせよ、チームに勝利を呼び込んだ右腕の粘りをたたえた。
正捕手と長く呼ばれてきた。競争の世界ではあるが、坂本、栄枝らに負けるもんかという自負を持って戦ってきた。負けないという自信もあっただろう。ただ、出場機会を与えられなければ、自らの力を発揮することも、証明することもできない。7試合ぶりのスタメン。ワンバウンドした才木のフォークを何度も体で止めた。代名詞のブロッキング。決して後ろにはそらさなかった。いつもより大きく、ゆっくりしたアクションで投手にアドバイスを送り、時に指示する姿も印象的だった。燃えないはずはなかった。「勝つことを目標にしてるんで。勝てて良かったです」。梅野はようやく快活な笑顔を見せた。(デイリースポーツ・鈴木健一)





