【野球】阪神助っ人を支える「通訳」の仕事とは 「距離感」大事に家族もサポートする「マネジャー」
阪神が各地で熱戦を繰り広げる舞台裏では多くの人が汗を流し、チームを支えている。裏方の仕事にスポットを当てる企画「密着仕事人」。阪神・中西等々通訳(28)は2019年に同職に就き、英語を話す外国人選手をサポートしている。通訳以外の仕事内容や大切にしていること、やりがいを明かした。
日々の仕事は通訳だけではなく多岐にわたる。中西通訳は「マネジャー要素が多いかもしれないです」と明かした。18時試合開始の日は11時ごろに球場入り。ミーティングの準備、トレーナーと共有事項の確認、練習の手伝いなど試合前から忙しく働く。
19年から阪神の通訳を務め、現在はビーズリー、デュプランティエを担当。2人が登板する日の試合中は捕手やコーチとの通訳をする中で、他の細かなところにも気を配っている。「バッターで行く時の打順の確認や道具の確認。(水分補給用の)水が足りてないかとかもチェックします」。グラウンド外でもサポートに尽力する。例えば外国人選手が家族と外食したいとなれば、味、価格帯などを考えながら、いい店をリサーチ。選手の家族が体調不良になった時は、すぐに病院を手配する。
プライベートでも外国人選手を支える中で、中西通訳が大切にしていることは「距離感」だ。「ずっとベタ付きだと外国人選手もしんどい。一人になりたい時はあると思うので、その時になるべく視界に入らないように。必要な時にはいれるようにしています」。これは入団時にチーフの栗山通訳にも助言されたことだった。
国士舘大時代、硬式野球部でマネジャーを務めていた中西通訳。「その時に距離感を学ぶことができた」と今に生かされている。選手が結果を出せず、つらそうなときには「あえて一緒にいる時間を増やして、話させてあげるようにする」。いつも一緒にいる存在だからこそ、心がけるのは普通に接するということ。くだらない話を増やし、リフレッシュできるように外で食事をともにすることもある。
選手の性格によっても接し方は変わる。「しゃべりたい性格だったら一緒について日本人選手と交流をさせたり。一人の時間が好きな選手には、なるべく一人の時間をつくってあげるようにしています」。ビーズリーもデュプランティエも明るく社交的な性格。なるべく日本人選手とのコミュニケーションが増えるように心がけている。
この仕事をしていてやりがいを感じる瞬間には「担当の選手が活躍したときですかね」と中西通訳。「あとは日本人選手と一緒に話して笑っているのを見たときとか。日本で家族旅行とかをして楽しんでくれているときもうれしい」とさまざまなシーンに喜びを感じている。
そのやりがいは自身の役割とも捉えている。「外国人選手が活躍するのはもちろん、その中で日本人選手としっかりコミュニケーション取れたりとか、チームの一員として役割を持ってできるような環境作りをしていければ。それがチームの勝利につながるように」。これからも外国人選手に寄り添い、チームを支えていく。(デイリースポーツ阪神担当・山村菜々子)
◆中西 等々(なかにし・とうら)1996年12月18日生まれ。東京都出身。国士舘大卒業後、2019年に阪神に通訳として入団。過去の担当選手はナバーロ、ガンケル、エドワーズ、ロハス、ウィルカーソン、ノイジーら。