【野球】なぜ?広島・藤井ヘッドの一人娘・綾乃さんが大阪を離れ慶大の野球部マネジャーを選んだ理由 上京決めた“運命の出会い”とは
今年で連盟創設100周年を迎える東京六大学野球リーグには元プロ野球選手の父を持つ部員が多く在籍する。それを支える立場である慶大・藤井綾乃マネジャー(3年・清教学園)も、その一人。楽天や阪神などで活躍し、「男前」の愛称で親しまれた広島・藤井彰人ヘッドコーチ(49)の一人娘だ。慣れ親しんだ大阪を離れ慶大へ進学した理由や、野球を通じて目にしてきた父の姿を聞いた。
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はじける笑顔と歯切れの良い口調からは快活な人柄が伝わる。「バリバリの大阪出身」の綾乃さん。父の楽天在籍時は仙台の幼稚園に通ったが、小学校から高校までは大阪で育った。大学進学に際し「全く上京は考えていなかった」というが“運命の出会い”があった。
高校1年時に1年間の留学経験があり国際関係に興味があった綾乃さんは、当初志望していた関西の難関国立大を見学に。だが「モチベーションを上げるつもりが、『ここに行くために勉強してるんや…』ってなっちゃって」と自身の大学生活を想像できなかった。そこで“弾丸キャンパスツアー”を決行。一人で東京行きの始発新幹線へ乗り、候補だった複数の大学を日帰りで見て回った。
その中でひかれたのが慶大だった。「初めて『ここしかない』って思えた。学生も校風も明るくて、みんな何かに向かって大学に来ていると感じて」。高校の関係者や先輩、父の同僚が慶大出身だったことも後押しし、受験を決意。指定校推薦入試で合格を勝ち取った。
高校時代に野球部のマネジャーだった綾乃さんと東京六大学との縁をつなげたのは、父の近鉄時代の後輩で、慶大では主将を務めた三木仁氏(現興国高コーチ)だった。「慶応の話を聞いた時に『野球部どう?』と。大学野球の規模、マネジャーができる仕事は高校までと全然違う。学生しかできない時間を有意義に使うには、この環境がベストかなと」。サークルに所属することも考えたが、三木氏から魅力を聞き、見学にも行った上で入部を希望。現在は、主に新入生対応や社会貢献活動の担当を担っている。
道しるべは父の姿だ。「めっちゃパパっ子」だった幼少期。幼稚園から帰るとユニホームに着替え試合観戦に行くことが日課だった。父と顔を合わせたくて、早めに就寝し、ナイター終わりの父が帰宅すると再び起きる生活。今でも彰人ヘッドコーチが関東遠征の際には必ず会うほど仲良しだ。
父の現役最終戦となった2015年10月11日のCSファーストS・巨人戦(東京ド)は、小学校最後の運動会を「体調不良」という口実で欠席し観戦。「その試合が最後か分からなかったんですけど、行かないと絶対に後悔するやろうなと」。父が引退会見で綾乃さんの観戦を明かしてしまい、同級生から“責められた”のはご愛嬌(あいきょう)。最後まで勇姿を見届けたからこそ学んだことがある。
「諦めたら終わりということ、緊張しないようになるまで練習して自信をつけることを学びました」。続けて「工夫してるんやなと。体小っちゃいじゃないですか。いろいろ考えて(大柄な選手とも)戦ってレギュラーの座を奪い合ってるんやと思いました」と頼もしい背中を思い浮かべた。
目指す将来像がある。具体的な職業は胸の中にしまっているが「今までの出会いも財産。自分から動いて人と関わる仕事、AIが代用できない仕事がしたい」と綾乃さん。マネジャーとしては「日本一&4冠」と目標設定し「このチームだから優勝できたと全員で思えるチームでありたい。100周年なので、慶応の看板を背負ってサポートしたい」と力を込めた。
ずっと変わらない原動力は「パパが頑張ってるから」-。“男前”な生き様を受け継ぎ、名門で奮闘を続ける。(デイリースポーツ・間宮涼)