【野球】なぜ岡田阪神は12球団ワースト打率でも勝てるのか 投手陣の踏ん張りとは別のポイントを評論家が分析

 「阪神7-0中日」(19日、甲子園球場)

 球団ワーストタイとなる10試合連続2得点以下だった阪神打線が、6日のヤクルト戦以来11試合ぶりに2得点以上となる今季最多タイの7得点を挙げて4連勝を飾り、今季初めて貯金生活に突入した。だが、チーム打率は12球団ワーストの・214。なぜ岡田阪神は貧打にあえぎながら勝つことができているのだろうか。

 3勝14敗1分けの最下位に沈んだオープン戦。打率・225は12球団中9番目に低い数字で、2試合連続完封負けで始まった開幕戦以降も、なかなか浮上の兆しが見えてこなかった。

 今季初のサヨナラ勝ちを飾った18日の巨人戦まで10試合連続2得点以下が続いたが、それでもその間のチーム成績は4勝4敗2分けの勝率5割をキープした。

 阪神OBの中田良弘氏は「そりゃ一番はピッチャーが頑張ったことに尽きると思うよ。これだけ援護に恵まれない中で、少ないリードを守らなきゃいけない試合が続いたわけだからね。特にリリーフ陣ね。ひとつ間違えば同点、逆転を許し、チームの負けにつながってしまうという緊迫感のある登板の中で、よく持ちこたえたと思う」と投手陣の奮闘を最大要因に挙げた。

 中田氏がもうひとつ「大きなポイント」として挙げたのが、梅野、坂本の配球だ。中田氏は「岡田監督は今年、梅野と坂本をうまく併用している。これは純粋に2人の競争心をあおることにつながってるし、お互いに投手のいいところを引き出している」と指摘した。

 続けて「今年は去年までの配球とパターンが違って、ここでインサイド行くの?という配球が見事に決まっている。相手選手が両捕手の配球に慣れたり、ある程度の配球パターンが頭に入っている中で、去年までとの違いをうまく出せているのが大きい」と解説した。

 伊藤将が先発した17日の巨人戦。丸に三塁打を浴びて無死三塁のピンチを背負った二回。2球で追い込むと、梅野は遊び球なしで内角直球を要求。左腕も投げきって岸田を空振り三振に仕留め、無失点でしのいだ。

 18日の巨人戦でも、延長にもつれ込んだ十回2死二塁。カウント2-2から加治屋に内角直球を求め、吉川に満足なスイングをさせず、空振り三振に仕留めたシーンがあった。

 前者は、外角球で1球は様子を見るだろうと打者が思う場面。後者は一塁が空いており、次打者が投手のバルドナードという状況に加え、吉川を打席に迎える前に安藤投手コーチがマウンドに向かっていた。吉川からすれば申告敬遠もあるかもと想定した局面。勝負は進み、平行カウントからまだ歩かされるかもという意識が残る中、勝負に来るとしても外角球やボール球という思考が働く中での内角直球という選択だった。

 19日の中日戦で青柳に今季初勝利をプレゼントした坂本は、ストライクゾーンからボールゾーンに外れる左打者への内角スライダーを巧みに空振りさせた。

 中田氏は「ピッチャーからすると、インサイドを要求されるってことは、とても勇気づけられることなんだよね。思い切って向かってこいと背中を押されてるようで。2人ともが去年までのデータの残像を使いつつ、今年に進化した配球を見せている。この点も打てない中で勝てた要因として見逃せないと思う」と語った。

 打てない、援護がない状況を耐え忍び、昨年の王者が今季初めて貯金を蓄えた。サヨナラ勝ちを飾った18日の試合後、「今日でちょっと吹っ切れたかも分からないですね、打線も。明日から、もっと打ってくれるでしょう」と2試合連続2桁安打を予見した岡田監督の洞察力も鋭いが、投手陣、そして梅野&坂本のインサイドワークが、苦しい状況を耐え抜くカギになっていた。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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