【野球】なぜ阪神・岡田監督は守護神候補・湯浅の2軍落ちを決断したのか 評論家「キャンプの時から差が激しかった」

 「オープン戦、巨人9-4阪神」(23日、沖縄セルラースタジアム那覇)

 口調に怒りの色がにじんだのは試合に負けたからではない。今年3度目の実戦登板でも浮上の兆しが見えなかったから断を下した。阪神・岡田監督が1回4安打2失点と乱れた守護神候補・湯浅の2軍落ちを明言した。

 「いや、明日から2軍やん。投げてる最中に(投手コーチに)言うたよ。だって、そんなん無理やん。ずっと言うてるやんか、だから。いろんな面でやり直さなアカンのちゃう?もう一回」と再スタートを命じた。

 4点ビハインドの七回に登板したが、先頭の松原に初球の149キロ直球を左前に運ばれると、続くオコエに148キロ直球を左前に。さらに山瀬にも147キロ直球を右前に運ばれて無死満塁。萩尾は一邪飛に仕留めたが、1死から中田に146キロ直球を中前に運ばれ2点を失った。佐々木を投ゴロ、泉口の四球を挟んで秋広を空振り三振としたが、自慢の直球を痛打される場面が目立った。

 岡田監督は「いやいや、ずっと言うてるやんか。そんなの。そら当然、ブルペンを見たら分かるやん。ずっと言うてるで、キャンプ初日から。そうやろ?そのまま出るっていうことやんか。ピッチャーってブルペンの球見たら分かるやんか。ずっと空振り取ってないやん」と切り捨てた。

 今年初登板となった11日の1、2軍合同紅白戦で1回3安打1失点。18日の広島との練習試合では1回を三者凡退の無失点としたが、指揮官は「広島なんか2軍みたいなメンバーで、そないしてボール球ばっかりで抑えたけど、分かるやん」と評価する内容でなかったことを明かした。

 開幕から守護神を任せた昨年、WBCに出場した影響もあってか、本来のキレ、スピードを欠いた。15試合の登板で0勝2敗8セーブ、防御率4・40。不振から2度も2軍落ちし、左脇腹の筋挫傷もあって、2被弾して逆転負けした6月15日のオリックス戦を最後に、1軍のマウンドに戻ってくることはなかった。38年ぶりの日本一を勝ち取った日本シリーズ第4戦で電撃復帰し、「湯浅の1球」で流れを呼び込み、第5戦では勝利投手にもなったが、まだ完全に自分の球を取り戻せていなかったということなのだろうか。

 この日、湯浅は26球を投げ、直球が15球、フォークが11球だった。だが、直球15球で空振りはゼロ。安打4、見逃しストライク1、ファウル5、ボール4、アウト1。上から強く投げ下ろす角度のある自慢の武器が、現状では武器になっていないことを数字が如実に表している。

 岡田監督は再起には時間を要するとの見方を示す。「そら、もう(時間が)かかるやろな。だってお前、去年より悪いやんか。ボールの走りからのお。WBCから帰ってきた時より悪いよ」と語り、勝利の方程式の一角として1軍に戻ってくるために踏まなければならない手順は多いと位置づける。

 阪神OBの中田良弘氏は「キャンプの時から、ハマった時とハマらなかった時の差が激しかったんだよね」と振り返る。その原因について「右足でためた体重が着地した左足に乗り切らないまま左足のかかとが浮いちゃって、捕手方向に体が突っ込んでた。下半身と上半身のバランスが悪いから、リリースポイントが安定しない要因にもなっていた」と分析した。

 では、湯浅が本来の真っすぐを取り戻すためには、どうするべきなのか。中田氏は「強いボールを投げようとするんじゃなくて、ボールの回転を意識するといい。スピンの利いたボールを投げられるようになれば、自然とリリースポイントは安定してくるし、ボールにも強さが出てくる。今の湯浅の真っすぐは俗に言う棒球。スピードガンは出てるかもしれないけど、打者からすれば怖さを感じない真っすぐ。キャッチボールから取り組んで体で覚えてほしいね」と一日も早い復調を願った。

 昨年も湯浅不在でシーズン終盤を戦い抜き、18年ぶりのリーグ制覇にたどり着いた実績がある。そこに今年はゲラが新加入し、厚さが増した。1カ月後に迫った開幕を目指す必要はない。期限を区切れば焦りが出て、逆に自分を見失う可能性がある。湯浅の完全復調を待てるだけの余裕がチームにはある。時間をかけて自分を取り戻せばいい。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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