【芸能】M-1敗者復活「同じネタは是か非か論争」シシガシラに見る復活組の難しさ
漫才日本一を決める「M-1グランプリ2023」は令和ロマンがチャンピオンに輝いた。異論の余地なき圧巻の漫才だったが、SNS上ではこんな声が燻っている。「シシガシラの敗者復活戦のネタがもう一度みたかった」。ハゲネタを武器に復活し、2番手で登場した個性派コンビのネタ選びを残念がる声だ。
今年の敗者復活戦は、7組ずつA~Cの3ブロックに分かれ、前のコンビより面白いか面白くないかを観客が判断する直接対決方式が採用された。印象の薄れる序盤の登場が不利なのは決勝同様で、実際、Aブロックは最後に登場したヘンダーソンが勝ち抜き、Bブロックは6組目まで後に漫才をしたコンビが勝ち上がった。
シシガシラはCブロックの3番手として登場。頭髪の薄いボケの脇田がMONGOL800の「あなたに」を歌うと、ツッコミの浜中英昌が「髪の毛のことを思って歌ってます?」と指摘する。脇田は否定するが、それ以降、すべての歌が自分の毛髪について歌っているようにしか聞こえない構成。しかも浜中は派手に突っ込まず、抑制された「野暮なことは言わないでくださいね、みなさん」といった雰囲気を確かな演技力で観客に提示していく。
過去にこすり倒され、既視感を禁じ得ないはずのハゲネタが、実にシンプルな形で発展されていた。脇田の頭越しに浜中の含み笑いが映る神カメラワークもピカり、文句なしの爆笑を提供。芸人審査員だった錦鯉の渡辺隆が「魔法にかけられた」と評したように、実にマジカルなネタで、ななまがり、フースーヤといった強豪を退け、5連勝でブロックを突破した。
そのまま敗者復活戦の覇者となり、2番手で決勝に登場。「コンプライアンス」をテーマにしたハゲネタに変更し、結果はブービーとなる9位だった。2人は地上波放送後に配信された「打ち上げ」で、決勝でのネタ変更を決めていたと明かしている。
歌ネタが確定しているダンビラムーチョがファイナリストに残っていたことで、脇田は「ダンビラが歌ネタをやるのわかっていたので、かぶるのは避けようと」と説明。進行役の千鳥・ノブは「決勝で違うネタ始めてスベり出したとき、ちょっとした犯罪を犯してるみたいな感じだった」と愛あるイジりをしたが、敗者復活戦を見ていた人の多くが同じような感情を抱いたのではないだろうか。
20年に優勝したマヂカルラブリーは、ファーストステージのネタ選びを直前に決めたと明かしている。前の組だった、おいでやすこがのウケ方やCM明けだった状況を踏まえ「フレンチで」と予定を変更。結果につなげたように、ネタ選びの柔軟性や決め打ちも勝負のアヤとなっている。
敗者復活組は、21年のハライチがそれまでのイメージを覆すステージ上を広く使ったネタを披露し、尺が規定を大幅に超えていたことも含めて話題を呼んだ。22年のオズワルドは、敗者復活戦と同じネタで決勝7位。
敗者復活戦の全国放送の生中継は、トレンディエンジェルが復活組から優勝するシンデレラストーリーを描いた2015年から始まり、多くの目に触れることとなった。22年は審査員の票に影響がないとはいえ「同じネタか」といった声も多かっただけに、ネタ選びの難しさは増しているのかもしれない。
敗者復活戦のネタが面白過ぎたという期待感と、決勝ネタがそれを上回らなかったという残念感ゆえに起こった今年の論争。もし決勝でもカラオケネタをやっていたら-。巻き戻しのできないイフだが、それもまたM-1の歴史に残るドラマなのだろう。
