【野球】なぜ阪神・岡田監督は三振後のベンチで涙した森下を厳しく突き放したのか 同じ大卒ドラ1野手の若手育成法

 5回、空振り三振に倒れ、ベンチで悔しさをにじませる森下(9月29日)
 5回、満塁で三振に倒れ、うつむきながらベンチに戻った森下(左奥2人目)の横でじっとグラウンドを見つめる岡田監督(右奥)=9月29日
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 タオルに顔をうずめて泣いていた。丸まる背中。ぼやける視界。異変に気づいたチームメートが声をかけて慰める。9月29日のDeNA戦。1点を追う五回無死満塁の絶好機でボール球に手を出し、空振り三振に倒れた阪神・森下翔太外野手の瞳から、悔し涙があふれ出た。

 その試合までの直近10試合で40打数5安打の打率・125。そのうち無安打試合が8試合、13個の三振を喫するなど、9月14日のリーグ優勝決定後は明らかに調子を落としていた。

 プロ野球選手が試合中に見せた涙。岡田監督は直後の守備からベンチに下げた。試合後の会見では交代させた理由について「アカンやろ。そらあ。自分でどうしようかなあと思ってるけどなあ。今日のバッティングも、あれやもんなあ。ストライクは1球も振らず、振ったらみんなボール。そんなんもうお前、お客さんに見せられへんよ。はっきり言うて。あんな姿」と説明し、厳しく突き放した。

 ベンチ内で泣いていたことについては「それはお前、自分やねんからお前。自分で崩れていっているんやから。ボール球を振って。ずっと同じ事の繰り返しやろ。こっちは何回も今まで手助けしたり、いろんなことをやったけど。前も言うたやんか。自分で分からんとアカンよ。自分で分かるやろ?あんだけボールを振ってて。ストライクは全部見送りで、振ってるのは全部ボール球やで。最後またボール球振って三振するわ言うたよ、ベンチで」と続けた。

 前日の28日は「森下はもう突貫工事よ。これからは。まだ、もうちょっと試合があるからな。もう試合が終わってからになるけど。3試合も4試合もノーヒット続いたら、終わってしまうからのお」と話していた。だが、この日の試合後には「いや、だからそんな、あんな姿見せられへんって言うてるやんか。それはお前、失礼やわな。お金払うて球場来てて、あの姿は。そらアカンわ。本人がそら、自分でそういう風になっていってるわけやからな。自分で崩れていくわけやからな、うん。ま、打席の中のことやからな。俺らがそこまでフォローしてもな。ボール球はそら、振るな言うても、打席で自分ひとりになった時にそないして振るんやからさ。もう、それはどうしようもないよ、こっちは」と、助言しても修正できない姿にいら立ちを隠せずにいた。

 12球団の監督を見渡しても、ここまで激しく個人の選手に厳しい言葉を並び立てる監督はいない。関西弁だから、標準語より強めの当たりに聞こえてしまう部分もあるが、それでも岡田監督の言葉は強い響きを持つ。

 翌30日の広島戦。岡田監督はスタメンから森下を外した。ドラ1は試合前に室内で打撃練習を繰り返し、自分を取り戻そうとした。八回1死でお呼びがかかり代打で登場。カウント2ボールから積極的に打ちに出て左前打。岡田監督は「いやいや、ちゃんとストライクを振ったやんか。それだけのことやろ」と短い言葉に森下の懸命の修正を認めつつ、「18日にちゃんと打ったらええんやから、はっきり言うて」と続けた。

 18日とはCSファイナルSが開幕する日にちを指す。岡田監督は最初から森下を起用する腹積もりながら、優勝からCSまでの期間をにらみつつ、タイミングを図りながら、早期優勝決定後に陥りがちな中だるみ的な部分を含めて森下を戒めたのだ。

 そして森下も、誰に言われるでもなく、自らの判断で左足を上げる打法にマイナーチェンジし、結果に結びつけた。こういったポイントが、指揮官の求める、考える野球ではないだろうか。

 10月1日の同戦ではスタメン復帰し、3打数2安打。岡田監督は「戻ったんちゃう。ちょっとは。俺は何もしてないよ」と表情を和らげた。森下は「やっぱりボール球を振らないと、自分のカウントにできる。思い通りのスイングができたっていうのは、試合を通してありました」と、岡田監督が口を酸っぱくして言い続けた「ボール球を振らないこと」から復調気配を感じ取った。

 今回の森下にしても、シーズン中盤の佐藤輝にしてもそうだった。マスコミを通じてあえて厳しい言葉を発信して選手に自覚を促し、自らの足で成長することを待った。戦場を離れ、外野から愛する阪神を見守り、15年ぶりにタテジマに袖を通し、65歳になった指揮官だからこそ成し得た選手操縦法であり、育成法ではないだろうか。

 近本、大山、佐藤輝、森下と同じドラフト1位の野手が多いが、岡田監督が持つ引き出しは多い。どんな局面に出くわしても対応策があるから、まだまだ阪神は強くなる。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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