【野球】伝説の延長17回“平成の怪物”との再対決に込める思い 堺シュライクス・大西監督

延長17回にPL学園の「5番・中堅」で出場した堺シュライクスの大西宏明監督
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 この夏、リベンジに燃えている男がいる。1998年夏の甲子園準々決勝で、延長17回の死闘を繰り広げたPL学園と横浜。PL学園の「5番・中堅」で攻守の中心となったのが、関西独立リーグ・堺シュライクスの大西宏明監督(43)だ。

 伝説は、8月5日に大阪・堺市のくら寿司スタジアム堺で再現される。人気漫画「バトルスタディーズ」(講談社)とのコラボイベント「バトスタデー」として、漫画に登場する「DL学園」に堺シュライクス、「横羽間」に淡路島ウォリアーズが扮(ふん)し、それぞれのユニホームで試合を開催。その始球式を「横羽間」のユニホームを着た評論家の松坂大輔氏(42)が行い、「DL学園」の大西監督が打席に立つのだ。

 延長17回に「5番・中堅」で出場し、延長十一回に横浜のエースだった松坂氏から同点適時打を放っている大西監督。甲子園では高校3年の春夏とも横浜に敗れているため、「今度はPL学園が横浜に勝利します!」と宣言し、始球式でおきて破りの“豪打”もほのめかす。

 大西監督の人生で「延長17回」の存在は、年を追うごとに大きくなった。PL学園から近大をへて近鉄、オリックス、横浜(現DeNA)、ソフトバンクと4球団を渡り歩いたプロ生活。「現役時代はオリックスの大西、ベイスターズの大西と呼ばれたが、引退してからは僕を知らない人も、延長17回は知っている。あのPLの、と言われるようになった」という。

 延長十七回、最後の攻撃の先頭打者は「5番・大西」だった。「あの時はもう体に(疲労が)きていた。遊ゴロだったが、足がつって一塁まで走れなかった」。動かない体へのもどかしさは今もリアルに思い出す。

 2011年に引退後は、大阪・心斎橋で焼き肉店「笑ぎゅう」を経営。監督との二刀流は、コロナ禍と戦いながらも5季目を迎えた。独立リーグは「プロ野球」とはいえ、選手は原石。アルバイトが必須で、今回のイベントも、出版社の協力やクラウドファンディングなどが支えている。選手の環境は、大西監督自身が歩んできた野球エリートの道からは程遠い。

 今季、東海大山形高から入団した捕手の松本龍之介(19)は、NPBから調査は受けたが、ドラフトにはかからなかった。「心が折れた」という時に受け入れてくれたのがシュライクスだった。今は引っ越し屋などのアルバイトをしながら、再び夢を追っている。

 延長17回は「動画で見た」と別世界だが、その中心にいた大西監督は「今でも体を鍛えていて、僕はパワーで負けている」と背中を追う存在。二塁までの送球が1秒88の強肩を武器にNPBを目指す19歳は、恩師から「アップひとつの細かいことから必死でやらないとプロでは通用しない」とハッパをかけられる毎日だ。

 独立リーグにあるのは、未来ばかりではない。必死にNPBを目指す松本のような者もいれば、モラトリアムから抜け出せず、球団をさまよい続ける者もいる。技術を教える以上に、一人一人の人生と向き合うのも監督の大きな仕事だ。

 大西監督自身も、甲子園のスターから、現役最後はソフトバンクの育成契約まで経験した。だからこそ、高校時代に超えられなった“平成の怪物”との対決に特別な思いを込める。伝説の再現は、もがき続けるまな弟子たちへのエールでもある。(デイリースポーツ・船曳陽子)

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