【野球】なぜ中日・立浪監督は代打・大島を告げなかったのか 1点を追った九回の選手起用に感じる監督業の難しさと育成ビジョン

 広島・矢崎を追い込みながら、あと一本が出なかった。1点を追った九回1死三塁。中日・福永が1ボールから浅い右飛に打ち取られ、代走・村松はタッチアップできず。龍空も遊ゴロに倒れて無得点。今季最多3万6341人のファンで埋まったバンテリンドームはため息に包まれ、ネット上には立浪采配を疑問視、批判する書き込みが集まった。

 「今一番調子のいい宇佐見にバントはないわ!」「大島使えよ」「手堅く送って点取れないの見飽きた」「もう何度目?」「どうせ点取れないならタッチアップで勝負して欲しかった」「左打者の宇佐見に進塁打の指示ならヒットになっていたかもしれんぞ」など、追いつけそうで追いつけず、敗北を突きつけられたことでファンのフラストレーションが爆発した格好だ。

 先頭の石川昂が左中間への二塁打。代走に村松を送り込み、続く宇佐見が犠打で1死三塁の同点機を整えた。ベンチには相手先発が左腕の森ということもあり、スタメンから外れていた大島が残っていた。福永の試合前時点の得点圏打率は・128。龍空は・222。大島は福永を2割上回り、龍空よりも1割高い・319。それでも立浪監督は37歳のベテランではなく、26歳のルーキーと3年目の20歳に託す決断をした。

 阪神OBの中田良弘氏は「ちょっと若手を使うことへのこだわりが強いかなと感じるね。大島は投手からしたら嫌なバッターだよ。まだオールスター前。ファンは奇跡を起こしてくれるって待ってるんだよ。なのに、なんか優勝が決まった後の消化試合と言うと厳しいけど、もう来年を見据えてるの?と思いたくなる選手起用が多いかな」と指摘した。

 立浪監督は九回を振り返り、「まずは同点というところでしたけど、結果追いつけなかった。こういう競ったゲームを追いついて、追い越せるようにやっていかないと」と話したという。

 試合前時点で77試合を消化して30勝45敗2分けの最下位。5日の巨人戦で3連敗を喫し、借金は今季ワーストを更新する17となっていたが、広島に連勝し、今季2度目の同一カード3連勝を飾るチャンスを迎えていた。

 立浪監督の頭に代打・大島の計算は当然あったはずだが、凡退してもファンが納得できるカードを切らなかったことで、より一層、采配がクローズアップされる形になった。ここに監督業の難しさを感じる。

 監督就任初年度の昨季に続いて現時点で最下位。投手陣の踏ん張りは目立つが、それ以上に際立つのがリーグ最少の得点力不足を解消できていない点。立浪監督は課題を理解しつつも昨オフ、打率・270、9本塁打、57打点の阿部を楽天・涌井と交換トレードし、1年間守り抜ける体力のある京田も昨オフ、DeNA・砂田との交換トレードを成立させた。ドラフト7位の福永を主に二塁で62試合でスタメン起用し、遊撃には昨季後半に飛躍のキッカケをつかみかけた龍空やドラフト2位の村松にチャンスを与え続けている。そこには彼らを中心としたチームを作り上げるというビジョンが見える。

 3年契約の2年目。育てながら勝つというのは、どの監督も背負う宿命だが、たやすくクリアできる問題ではない。今季の優勝、上位進出、目先の1勝を見据えつつ、将来をにらんだ起用、育成、成長を追い求める。木下の骨折に伴い、山本、郡司-宇佐見、斎藤という2対2の交換トレードを日本ハムとの間でまとめ、新外国人右腕のメヒアを獲得するなど、ひとつでも上の順位を狙う足場を固めている。

 ただ、事実として負けがかさんでいることで、立浪監督の采配と起用などに対するネットを中心とした異論は根強い。それでも、敗戦時には批判の割合が多い書き込みにも「若手が育ってきている」「これからが楽しみ」「あとは経験を重ねて勝つだけ」「信じて待ってる」という擁護派も存在する。

 いつの時代にも賛否はある。勝ちの割合を増やすことで、マイナスの声は比較的抑えられるが、今はまだその過程。10回のうち7回を失敗した打率3割が評価される野手だが、経験値の少ない若手に置いては、失敗の割合は当然多くなる。常勝軍団、強いチームを築く道中では、球団、見守るファンにも忍耐力が必要とされる。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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