【野球】バウアー激怒事件がDeNAに呼んだもの 三浦監督「今日でみんなひとつになれた」

 親日家というフレーズに偽りなしだ。6日のDeNA-ヤクルト戦。今季2度目の中4日登板で来日最多となる128球を投げ、4安打2失点で来日2度目の完投勝利となる6勝目を挙げたトレバー・バウアー投手(32)がお立ち台で叫んだ。

 「ユメ カナウマデ チョウセン」

 夢叶うまで挑戦。今季のチームのスローガンである「横浜頂戦」に引っかけたフレーズ。1998年以来、25年ぶりのリーグ優勝を狙う助っ人右腕の熱い心意気が伝わってきた。

 前回7月1日の中日戦。六回2死一、二塁から岡林を打ち取った打球が挟殺プレーとなったが、連係ミスでアウトが取れず、顔を真っ赤に染めて激怒。右腕をなだめる目的を兼ねてマウンドに来た斎藤投手コーチの話も耳に入らないほど我を失い、マウンド周辺を歩き回って絶叫していた。プレーに絡んだ捕手の伊藤、二塁・牧も、あまりの激怒っぷりに声の掛けにくさを察していた。

 冷静さを取り戻したバウアーは試合後に「自分自身をコントロールできていたとは思っていません。誰かに対して腹が立っていた訳ではありません。強いて言えば自分に腹が立っていました。ヒットと記録されていましたけど、自分自身のエラーも不運もありましたし、優勝するための野球が、あのイニングに関してはできていなかった。その状況に腹が立っていました」と振り返っていた。

 あれから5日後の登板。

 三回、並木に先制打を許した。それでも五回に味方が逆転してくれた。六回、先頭打者に四球を与えたが、サンタナ、村上、オスナを3者連続三振に仕留めて吠えた。1点差に迫られた八回2死一塁でも村上を見逃し三振に仕留めると、どうだ!とばかりに村上を見つめて声を張り上げた。気迫が充満していた。

 八回終了時点で118球。ベンチに戻った右腕に三浦監督が声をかけ、左肩付近に触れた。「グッジョブ!お疲れさま」の意味合いかと思われたが、バウアーは左肘付近にエルボーガードを装着し、2死一塁で打順が巡ると、当然のように打席に向かった。スタンドは驚きと歓声の両方が入り交じったどよめきに包まれた。

 日本投手は同じ曜日で投げ続ける中6日が主流。メジャーリーグでも中4日の経験があるとはいえ、一般的には100球前後で降板するケースが多い。だが右腕は、来日初の中4日登板となった6月14日の日本ハム戦でも113球を投げて9回1失点完投勝利を挙げていた。それでも、118球を投げてなお、最終回に臨もうとしたバウアーの執念には凄みを感じた。

 九回を三者凡退に仕留め、6勝目を挙げた。「とにかくチームの連敗を止めたかった。投げられるところまで投げるつもりだった」。侍を思わせる心模様だった。

 三浦監督は続投を決断した理由について「表情を見ていても、疲労感というか、そういうのを一切見せずに、ベンチに帰ってきてからも集中していましたし」と語った。

 試合中には野手陣がバウアーに声をかけるシーンが何度もあった。三浦監督は「チームメートとバウアーがコミュニケーションを取りながら、試合中にもみんなが『守ってやる』って声をかけにいって、間を取りにいったりとか、大和とかね。野手陣がしてくれていた。光(伊藤)もよくリードしながら、声をかけていきながら、バウアーもそれを理解して、投げる相手打者を理解して学びながら、日本の野球文化を理解しながら吸収していってくれているからこそ、今日ああいう形でみんなひとつになれたと思います」と感慨ひとしおにチーム一丸でつかんだ勝利を喜んだ。

 怒りの感情を爆発させたことで腫れ物に触るような存在になり、チームメートと距離感ができてしまう例は過去に何度も見てきた。だが、DeNAナインは勝利にかけるバウアーの思いを改めてくみ取り、以前にも増して寄り添い合えるチームになれた。連敗を止め、首位・阪神に1・5ゲーム差に迫った白星が、1勝以上の重みを感じさせた。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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