【野球】「まるで別人」と米メディア 快進撃続ける菊池雄星、ピッチクロックを味方につけたか

 カナダ・トロントに本拠を置くブルージェイズ・菊池雄星投手(31)の快進撃が止まらない。7日のパイレーツ戦(日本時間8日)で七回途中4安打無失点の好投を見せ、開幕から無傷の5連勝。日本時間9日現在、リーグ2位タイの白星を量産する左腕の快進撃を支えるものは何なのだろうか。

 7試合に先発して5勝0敗、防御率3・35。QS(クオリティースタート。6回以上を投げて自責点3以内)率42・9%は決して高い数字ではないが、37回2/3を投げて8四球。1試合平均で2個を切る制球力がまず目につく。

 マリナーズに所属した2019年のメジャー移籍初年度が6勝11敗、防御率5・46、翌20年は2勝4敗、同5・17、21年は7勝9敗、同4・41、ブルージェイズに移籍した22年は6勝7敗、同5・19。日本球界で73勝46敗1セーブ、防御率2・77を誇った男は、メジャー移籍後、毎年負け越し、21勝31敗、同5・02と苦しんでいた。

 野球評論家の中田良弘氏は「コントロールが良くなった。去年までは素晴らしい球がいったと思った次に、キャッチャーのミットが大きく動く逆球になったりとか、自分でボールをコントロールできずに崩れていってたけど、今年は右打者の内角へのスライダー、外へのチェンジアップがイメージ通りに投げられているから、横の幅が有効に使えてる。元々、真っすぐには力があるし、ようやく菊池本来の投球ができ始めたなって感じを受ける」と好調の要因を分析した。

 数字が裏付ける。19、20年の与四球率が約2・8、21年が同3・6、22年が同5・2と悪化の一途をたどっていたが、今季はここまで約1・9と大幅な改善が見て取れる。

 野球評論家の関本四十四氏は「下半身の動き、グラブを持つ右手の動き、試行錯誤する中でトップを作るまでの動きがスムーズになり、安定している。去年までは四球、四球を懸念して、置きにいったボールを打たれるという悪循環もあったが、投球フォームに躍動感も出ている。投げ終わった後に左足をポーンとはね上げるような菊池らしさも見られるよな」と、投球フォームの改善が課題の制球面の安定につながっていると解説した。

 関本氏は続けて「ピッチクロックも菊池にいい方に作用している気がする。元々、テンポの速い投手にコントロールが大暴れする投手は少ない。あのルールによって、シンプルに投げるリズムができて、どんどん乗ってきているように感じる。ピッチャーによっては打者が打席を外して肘当てを直す動作すらイライラするのもいるんだけど、新ルールによってそういうことも少なくなった。今はそれはプラスに働いているんじゃないか」と、導入決定時には大方の投手が対応に苦慮すると思われていた新ルールが、菊池にとってはプラスに作用したのではとの見解も示した。

 メジャー移籍5年目でようやく本来の輝きを取り戻しつつある左腕に対し、地元紙の「トロントサン」は「MLBの投手として本格的に復活し、この調子を維持できるかもしれない」と伝え、MLB公式サイトでブルージェイズのリポーターを務めるキーガン・マシソン氏は「チームにとってキクチは最高のストーリーのひとつであり続けている。2022年と比べると別人のようだ」と驚きを隠せない。

 日米通算99勝。節目の100勝に王手をかけた。次回登板は12日(日本時間13日)からのブレーブス3連戦が濃厚で、ナ・リーグ東地区で2位のメッツに7ゲーム差をつけて首位を独走する強敵相手に連勝を伸ばすことはできるだろうか。(デイリースポーツ取材班)

 

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