【野球】もし日本に大谷流「ピッチコム」が持ち込まれれば- 名捕手像が大幅に変革する
もし、日本球界に大谷翔平流ピッチコム活用術が持ち込まれれば、名捕手像が大幅に変革する。
今季から米メジャーは試合のスピードアップを図る目的で、ピッチクロックが導入された。投手は走者がいない場合は15秒、走者がいれば20秒以内の投球動作開始が義務づけられる。打者は制限時間が残り8秒になった時点で投手の投球に備える必要がある。違反すればそれぞれワンボール、ワンストライクが加算されることになる。
開幕から投打で絶好調のエンゼルス・大谷翔平(28)はマウンドに上がる場合、ピッチクロック対策としてピッチコムを使用している。これはバッテリー間がサイン交換のために使用する電子機器で、捕手側から要求する球種のサインを伝達する場合が多い。だが、大谷はピッチコムを使い、自らが投げたい球種を捕手に伝達している。昨季まではマウンド上で捕手のサインに何度も首を振るシーンが多く時間を要していたが、それがなくなり27日のアスレチックス戦のような機器トラブルを除けばスムーズに活用している。
今のところ、日本球界にピッチクロックを導入される予定はないため、ピッチコムを使用することはない。だが今後、WBCなどでピッチクロックが使われないとも限らず、日本球界に持ち込まれる可能性も出てくる。
もしそうなれば、これまでの名捕手像が大きく変わることは間違いない。過去、担当の野球記者として故野村克也監督の捕手論を聞かされたこともある。また、広島の達川光男氏(67)、西武・伊東勤氏(60)やヤクルトの古田敦也氏(57)、横浜(現DeNA)の谷繁元信氏など(52)球史に名を残す捕手を取材してきた。もちろん捕手としての個性があり、サインの出し方や投手の持ち球の使い方などは違うが、共通しているのは打者との読み合いだ。裏をかく場合もあれば、裏の裏をかくケースもある。だが、誰もが「それが捕手冥利(みょうり)に尽きる」と話してた。
大谷のように、投手側がサインを出すようになれば、捕手としてはあまり打者との駆け引きを持ち込む余地はないだろう。それでも、女房役の捕手はただ投げられた球を捕球するだけの存在ではない。楽天・田中将大(34)がヤンキースから復帰した際に物議をかもした捕球術「フレーミング」が、さらに求められるようになるかもしれない。捕手が際どいボール球を受ける際にミットを微動させ、審判にストライクを取ってもらう技術のことだが、露骨な動きはむしろ審判に悪印象を与え、逆効果になる。投手が投げやすい構えの追求も必要となってくるだろう。
時代とともに変革が求められるのは野球に限った話ではない。今後、新たな名捕手像が構築されていく過程をみるのも悪くはない。(デイリースポーツ・今野良彦)





