【野球】広島を首位に押し上げ新井新監督はあらたな指揮官モデルを構築できるか

 広島を首位に押し上げ新井貴浩新監督(46)はあらたな指揮官モデルをこのまま構築できるのか。

 鯉のぼりの季節はまだ少し先だが、広島が上昇気流に乗っている。10年ぶりの開幕4連敗を喫したが、それ以降は好調をキープ。特に、本拠地・マツダスタジアムで絶対的な強さを誇り、4月4日の阪神戦は4-5と敗れたが、それ以降は本拠地7連勝で、昨年5月13日以来となるセ・リーグに首位に立った。

 今季は大きな補強もなく、チーム史上初となるリーグ3連覇を狙うヤクルトや岡田彰布監督(65)が復帰した阪神、昨季はわずかの差で2位に終わった三浦DeNAに比べて、前評判は高くなかった。だが、わずか13試合とはいえ、それらのチームを抑えて首位に浮上したのは、もちろん選手個々の力は大きい。16日のヤクルト戦(マツダ)では4点差を追う六回二死満塁から田中広輔(33)が起死回生の同点2号満塁本塁打を放った。前日15日の試合では九回二死から秋山翔吾(35)のサヨナラ1号2ランを放つ神がかり的な勝利をしたばかり。連日信じられない試合を繰り広げている。

 そんな劇的勝利を演出している背景にあるのは、新井監督のこれまでにあまり類いをみない、監督像がチームに雰囲気作りに大きく関与しているとしか思えない。

 私は、野球記者として広島に始まり、阪神、日本ハム、ヤクルト、横浜(現DeNA)の7球団を担当してきた。その間、取材したことのある監督は故古葉竹識氏に始まり、巨人の長嶋茂雄終身名誉監督(87)、故野村克也氏ら10人を超える。現在、NPBの球団で指揮を執っている監督の12人のうち、セ・リーグでは阪神・岡田監督や巨人・原辰徳監督(64)ら4人、パ・リーグでも楽天・石井一久監督(49)、西武・松井稼頭央監督(47)ら3人の現役時代を取材したこともあり、ある程度の監督業を務めるバックボーンは把握しているつもりだ。

 これまで取材してきた監督たちはそれこそ十人十色。鉄拳制裁を辞さない人もいたし、あえて選手とは距離を置く人などさまざまだった。だが、新井監督のような喜怒哀楽の「喜」を前面に押し出す指揮官は初めてだ。

 16日の試合では田中が本塁打した瞬間、新井監督は一塁ベンチで右拳を高く突き上げて絶叫した。15日の秋山のサヨナラ弾を本塁ベース付近で待ち受ける歓喜の輪の中に新井監督が混じっていた。過去、サヨナラ勝ちに貢献した選手をベンチ前で出迎える指揮官はいた。選手に先駆けてベンチを飛び出した監督など過去、目撃したことはない。ある意味、異常な光景だろう。

 かつて、監督たるもの1試合ごとに喜怒哀楽を出すのはご法度的な雰囲気が球界にはあったように思う。だが、ナインと一緒に、感情を爆発させる指揮官がいてもいい。逆に今の時代、それが球界の新たなリーダー像として期待されるようになるかもしれない。(デイリースポーツ・今野良彦)

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