【野球】なぜ3位決定戦はないのか 侍Jが優勝を狙うWBC 主催者に聞いてみた

 5大会連続の準決勝進出を決め、日本時間21日午前8時から米国・マイアミで決勝進出をかけてメキシコと戦う侍ジャパン。同20日午前8時開始のもうひとつ準決勝は米国-キューバに決まったが、5回目を迎えた今大会も3位決定戦は行われない。なぜだろう。

 WBCはメジャーリーグベースボール(MLB)機構と、MLB選手会が立ち上げたワールド・ベースボール・クラシック・インク(WBCI)が主催しており、MLB関係者に3位決定戦を行わない理由を聞いてみた。

 すると「MLBをはじめ、各国のプロリーグの開幕が迫っている状況を考慮し、選手達が可能な限り早く所属球団に戻ってシーズンの準備ができるように(3位決定戦を行わないことを)選択しました」との回答が寄せられた。

 2006年、09年、13年、17年に行われた過去4回を振り返れば、開催時期はいずれも3月で、MLB関係者の言葉にもあるように、いずれの国もシーズン開幕前。NPBに所属する日本選手を取り上げれば、大会前の2月中旬から1カ月間ほど所属チームを離れ、帰国後1週間後には開幕戦を迎えるタイムスケジュール。国の威信をかけて戦うWBCには、国際親善や野球普及の国際化などの意味合い、目的も含まれているが、大会後にはNPBでは143試合のペナントレースが控えている。

 米CBSスポーツ(電子版)によると、今大会の賞金総額は1440万ドル(19億4400万円)で、優勝国には100万ドル(1億3500万円)が与えられるという。出場全20カ国が30万ドル(約4000万円)を手にし、1次リーグ突破で40万ドル(5400万円)、同リーグの1位通過でさらに30万ドルを獲得できる。準々決勝に勝てば50万ドル(6750万円)、準決勝の勝利でも50万ドルが与えられ、優勝チームは最大で300万ドル(約4億円)を獲得できる。

 前記のように、WBC出場国には順位によって異なる賞金が与えられるが、推定年俸53億円の米国・トラウト(エンゼルス)、同30億円のドミニカ共和国・ソト(パドレス)、同43億円の日本・大谷(エンゼルス)、同31億円のダルビッシュ(パドレス)のサラリーは所属球団から支払われており、WBCで獲得できる賞金とは「0」の数が大きく違う。

 WBC出場に際し、各選手は万が一の故障に備えて保険に加入する。1次リーグ最終戦でドミニカ共和国を破って準々決勝進出を決めたプエルトリコの守護神で、メジャー通算205セーブのE・ディアス(メッツ)が歓喜に沸いた勝利直後のマウンドで右膝を痛め、右膝膝蓋腱全断裂で全治8カ月の重傷を負った。このように試合等のアクシデントなどでその後のシーズンに出場できないなどの支障を来した場合、当該選手に支払う年俸は保険金で充当されることになっており、金銭面で所属球団の腹が痛むことはないとされているが、優勝を狙うシーズンをにらめば大きな戦力ダウンとなるだけに、わずか1試合ではあるにせよ、故障のリスクから遠ざける意味合いもあるのかもしれない。

 コロナ禍により、21年の開催予定が2年延期となって、6年ぶりに開催された今大会。日本代表にNPBを離れて久しいメジャー所属のダルビッシュ、大谷、史上最年少三冠王の村上、最速165キロ右腕の佐々木朗、2年連続投手4冠の山本ら超人気選手が名を連ねたことに加え、これまで一流選手の出場に二の足を踏んでいたMLBの各球団が大多数の選手に対して出場を許可した。米国ではMLB通算299本塁打のアレナド(カージナルス)、同315本塁打のゴールドシュミット(カージナルス)ら、ドミニカ共和国では同283本塁打のマチャド、同125本塁打のソト(パドレス)ら、ベネズエラでは同1935安打のアルテューベ(アストロズ)、21年に48本塁打を放って大谷とし烈な本塁打王争いを繰り広げたペレス(ロイヤルズ)などのメンバーが選出されたことで、これまでにない盛り上がりを見せている。

 過去4大会は16カ国の出場だったが、今大会は4カ国増えて20カ国になった。次回の第6回大会は3年後の26年に開催される予定だが、次回大会では過去いずれも米国で行われてきた準決勝、決勝を別の国で行う可能性はあるのか、全出場国が開催地に集まり、日本と米国が1次リーグから同組となって対決するプランはあるのだろうかなど、期待を膨らませるだけでも今から待ち遠しい。

 この件に関して前述のMLB関係者は「会場や組み分けに関しては、開催前年に話し合われるので、現時点では答えられない」としたが、別の大会関係者は「見ている人に喜んでもらえるエンタテインメイトを提供し続けたいと思っている。時間の許す限り、いろんな可能性を探っていきたい」と語るなど、サッカーのW杯に負けない魅力満載のコンテンツを目指していく方針を示した。

 3大会ぶりの世界一を目指す侍ジャパンの勝敗とともに、今後のWBCの行方にも注目している。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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