【野球】引退・嶋の思いと“前を向く”理由 来季からヤクルト1軍バッテリーコーチ兼作戦補佐に

 今季限りで現役を引退したヤクルトの嶋基宏捕手兼コーチ補佐(37)が、来季から1軍バッテリーコーチ兼作戦補佐に転身する。背番号は楽天時代の恩師である故・野村克也氏がヤクルト監督時代につけていた「73」に決まった。現役最後の3年間、共に汗を流してきた仲間にメッセージを送った。

 「家族のようなチーム」-。ヤクルトで過ごした3年間を、嶋はこの言葉に込めた。苦しみ、悩んだ時間を全員で共有し、成し遂げたリーグ連覇。「いい仲間に巡り会えて引退できたのは、本当に幸せでした」。ありがとう、また頑張ろうな。思いを伝え、再スタートを切る。

 過ごした時間を振り返れば、キリがない。楽天時代から大切にしていた試合前練習の、前の準備。川端や塩見と毎朝室内練習場へ向かい、汗を流すことが大切な時間だった。長岡、宮本ら若手も続々と駆けつけ、「ボールを拾いながら、いろいろな話をした」と言葉を交わし続けた。

 中でも、多くの時間を一緒に過ごした中村の成長がうれしかったという。中村は今年ケガに泣き、正捕手不在の中でチームは開幕。復帰した5月、嶋は確かな変化を感じていた。「2カ月とかファームにいるでしょ?その時にファームの選手といろいろ話をしていた」とし、言葉を続けた。

 「どうしても1軍でずっと試合に出ていると、2軍で苦労している選手の気持ちを忘れがちになる。でもそこでした会話は、いつか必ず財産になるから」

 あと少しのところで2年連続の日本一には届かなかった。嶋は言う。「強くなったら、必ず苦しい時がくる。その時に一人、一人がその壁にどう向き合っていけるか」。その苦しい時は、もしかしたら“今”なのかもしれない。指揮官の涙に、胴上げを最後までジッと目に焼き付けた4番。それぞれが胸に思いを秘め、前を向く理由を探していた。

 「ダメな時をどれだけ経験できたかで、人間は大きくなれる」。これはかつて嶋自身が、現ソフトバンク2軍監督の小久保裕紀氏に言われ感銘を受けた言葉。強くなれる。届かなかった悲願は、新たな指針になると信じている。(デイリースポーツ・松井美里)

 ◆嶋 基宏(しま・もとひろ)1984年12月13日生まれ、37歳。岐阜県出身。現役時代は右投げ右打ちの捕手。中京大中京から国学院大を経て、2006年度大学・社会人ドラフト3巡目で楽天入団。20年ヤクルト移籍。22年は選手兼任コーチで同年現役引退。23年からバッテリーコーチ兼作戦補佐。ベストナイン、ゴールデングラブ各2回(10・13年)。15年プレミア12日本代表。

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