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【芸能】コロナ禍2年半、フェスの現在地とは-フジロックの場合(前)

初日のヘッドライナー、ヴァンパイア・ウィークエンド
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 コロナ禍で2020~21年、ほとんどの音楽フェスが中止、もしくは延期を余儀なくされたが、今年は違う。昨年は邦楽勢のみでの開催だったFUJI ROCK FESTIVAL、開催がなかったサマーソニックが海外アーティストを招へいしての開催にかじを切り、その他の大型フェスも復活した。“令和の二・二六事件”から現在までフェスが歩んだ苦難の道について、フジロックを主催するSMASHの石飛智紹取締役に聞いた。(デイリースポーツ・藤澤浩之)

  ◇  ◇

 石飛氏は「“二・二六事件”って知ってます?20年2月26日」と記者に逆質問した。

 この日、政府は新型コロナウイルス感染症対策本部会合で、2週間の全国的なスポーツや文化イベントの中止や延期、規模縮小を要請。これを受けて当日、予定されていたPerfumeの東京ドーム公演、EXILEの京セラドーム大阪公演は急きょ中止された。

 「それを言われて『そんなの関係ない』って(開催)できませんよね?(政府は)それぐらいの想像力もないのかっていうことも含めて、あれは一生忘れられません。全てあの日が尾を引いているなと。そういう意味で『二・二六事件』って言ってるんです」

 ライブハウスでのクラスター発生をきっかけに、人を集めるエンタメへの圧力が強まった。それ以降も公演は軒並み中止を余儀なくされ、音楽フェスも例外ではなかった。

 フジロックは20年が事実上の中止となる延期で、21年は邦楽勢のみで開催された。例年延べ10万人以上、19年を例に取れば延べ13万人だった観客数は、21年は延べ3万5千人に激減した。20年からの収支は「かなり厳しかった」という。

 20年の延期、21年の邦楽勢のみでの開催発表、21年の開催直前での感染者数の激増という3回のタイミングで払い戻しを余儀なくされ、「ダメージは何度も」受けた。

 中止を決断した20年は「太刀打ちできないなと。イベントやるにもどういった対策を行うかの情報も少なければマスクも手に入れにくく、ましてやワクチンはまだできていない状況でした。中止せざるを得ない」と、開催する余地はほぼなかった。

 マスクやワクチンの状況が好転した21年、払い戻さずチケットをキープしてくれたフジロッカーとの絆もあり開催に踏み切ったが、年頭の段階で「海外のアーティストを順当に招へいすることは難しいだろうと。来てくれたとしても、海外のアーティストには長期間の隔離だとかなんだとかで無理を強いることにもなるだろう」との見通しがあり、邦楽勢だけでの開催を決断した。

 「フジロックは多様な音楽を紹介するというコンセプトと、それを大自然の中で楽しむといったことをやってます。このコンセプトに沿って、フジロックと自信をもって言えるものにしていこう」と、本質は曲げないように進めていったが、「やること自体が悪みたいに風評されてしまいました」と振り返るように、フェスへの風当たりは厳しい時期だった。

 「政府、業界団体のガイドラインを当たり前に守る」、その上で「自ら水際対策を徹底した。自主規制、自粛です。禁酒、事前の検査。スタッフ、出演者は全員PCRやりましたし、お客さんには3万個以上の抗原検査(キット)をお配りした。唯一開催するということだけ自粛しなかったが。結果的には用意周到にやれたのではないか。PCR検査だけで6000人やっていますからね」と、念には念を入れて対策を積み重ねた。

 ワクチン接種が進まない時期、受け入れる新潟県と湯沢町も「しっかり対策を考えてくれて」動いた。

 出演者やスタッフ、観客を出迎える町民を中心にワクチンを早めに接種し、バスのドライバーだけでも約1500キットを使って抗原検査を実施した。議会で対策を説明した石飛氏は「振り返れば町ぐるみ、全ての皆さんと一緒に開催を迎えることができた」と受け入れ側に感謝する。

 観客のマナーも総じて良かった。

 「覚悟して来ていただいたから、ホントに感染がなかったと思う。みんな感染防止対策を、言われたからやるんじゃなくて、ちゃんとマナーとして身に着けていらしたんだなという印象が強かった。本当に感謝しています。追い返すとか退場させるとか、そういう人は一人もいなかった。検温(に引っかかった人は)本当にゼロでした」

 結果、個々人のケースを全て把握することは現実的に不可能ではあるが、フジロックからクラスターが発生することはなかった。記者自身、いち観客として参加したが、東京にいるよりもはるかに安心感があったというのが率直な感想だ。

 業界内では、フジロックやサマソニに代わって開催されたスーパーソニック、中止になったもののROCK IN JAPAN FESTIVALやSWEET LOVE SHOWERといったフェスの主催者が野外ミュージックフェスコンソーシアムを組織し、業界でガイドラインを作成。政府のガイドラインと合わせて、開催にあたって厳しい独自基準を設けていた。

 しかし、21年の夏には、業界団体以外の主催者によって、酒類を提供したり感染対策や出演者および観客のマナーが劣悪だったりしたフェスや、不織布マスクの不着用を求めるフェスなども開催され、それらが報道されるとフェスバッシングに拍車がかかった。

 石飛氏は「オリンピックに対するバッシングも含めて、善しあしうんぬんではなくて、結局はこの感染下でイベントをやる・やらないっていう大枠のことがある。事情を知っている人なんか一握りなわけで、日本で一番大きいフェス(ROCK IN-)はやめるのに、なんでフジロックはやるんだ?っていう議論というか、そういう対比になってきた。あとは感染者数が増える度に、当事者以外の外野が増えてきた」と回想。「おこがましいですけど、われわれがやったようなスタイルを、情報もオープンにして、こうすればできるっていうようなことでお手本にしてほしかった」と、業界団体以外の主催者や、その開催を認めた自治体の姿勢を嘆いた。(続く)

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